あなたに出逢えた
「ただいま」

それから二時間後に栞菜は帰って来た。



「お帰り。親父いるから、キッチンに。そろそろメシだって」

「分かった」


それだけ言うと、栞菜は部屋へと戻っていった。でも、なぜか目が泳いでいた。



絶対何か隠してるな、あの目。

でも、無理に聞きださない。いつか行ってくれる日を待っている。今できるのは、そのくらいしかねぇからな。




でも、時間がねぇ。日本に帰っても、あいつは違う学校に行くし、一緒に暮らさないって言ってる。正直、すげぇ心配。


でも、大丈夫だって言ってんだから、信じるしか、ねぇよなぁ……。



あぁぁぁ!信じるってムズイってのっ!信じるってどうすりゃいいんだよ!

まぁ、考えても仕方ねぇけどさ。


なんか、俺、考えすぎじゃね?栞菜だって、もう高校生だぜ?幼稚園児じゃあるまいし……。

大丈夫だって。だれかに手ぇ出されなきゃいいけどな……。可愛いし、栞菜。




て、うわぁああぁ!何考えてんだよ俺!ぜってぇ本人には言えねぇ……。




もがいている俺を、ずっと栞菜が見ているなんてことを知らずに……。








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