あなたに出逢えた
【栞菜side】
なんか、瞬がもがいてた。見て見ぬふりをしてたけど、ヤバかった。




すっごく面白いっ!


キッチンで笑うのはマズいから、部屋に帰ってから声を殺して笑ってた。


ヤバかった!本当にヤバかった。
あれが学校一のモテモテ男子なのってくらいに顔が……ふはっ!

「あれは、瞬を好きな女の子には見せられない顔だよね」


瞬はわりと学校では、明るくて悩みのなさそうな気配りのできるカッコいい男子って言われてる。

それに、顔もイケメンだし。そのイケメンが崩れるし、思いっ切り悩んだ顔してるし。


おかしかったなぁ、あの顔……。あれは、誰が見ても笑うよ。絶対に。自信あるもん。




私は、机に向かいながらひとり呟いていた。

これでも成績いいんだから、キープしないとまずいの、私。
これ以上迷惑かけたくないしね。



もちろん瞬や慧さんには言わない。言ったら、一緒に住むことになりそうだし。



ママが死んじゃって、少し経ったけど、私はまだあの動画を見ていない。




「どうしよう、このまま見ないのは嫌だけど……」



まだ見られるほどの勇気がない。怖い。

ママが最後に何を言ったのか、私に何を伝えたかったのかも、私には分からない。



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