あなたに出逢えた
「……見なきゃ。ママが言いたいことを、ちゃんと私が知っておくんだ。ちゃんと聞いて、最高の笑顔でまたママと話せるように。愛しているママからのメッセージだから……」



そうだ。ママからの大切なメッセージだから。

私は、この時初めて死んでしまったままと向き合えたような気がした。今までは逃げているような気がしていたから。


そう思った私は、あのメッセージを聞こうとママのケータイを取り出した。瞬に渡されてから、ずっと開けなかった引き出しをようやく開けて。



「……栞菜。ママは、もうあなた、に会えるこ……とはな、いと思うわ。……だから、お願いを……きい、て……?わ、たしの……クローゼ、ットの中……に、手紙……あるから……。読んで、欲しいの……。そこに、私の……気持……ちが詰まって……るから……」



そう言って私に笑顔を向けた母が、画面から姿を消した。最後に向けた私への精一杯の笑顔。私を愛していると言ってくれた時と、同じ顔だった……。



「マ、マ……私、私……うぅっ……」



私は、こらえきれずに部屋でひっそりと涙を流した。今までためていたものすべてを、その涙に乗せて……。




しばらく泣いた後、時計を見るともう深夜の1時を指していた。



「もう、こんな時間か……」



今からでもママの部屋に行ってクローゼット中を探したいけど、この時間からだと無理だろう。



「明日、必ず探すからね……」


私は、見てくれているであろうママにそう告げて、深い眠りに落ちた。




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