あなたに出逢えた
「瞬君のお父さんなら知っていますよね」

私は、瞬君のお父さんに問いかけた。


「何をかな?」

「栞菜の居場所です」

「……っ!」

やっぱり。瞳の奥が一瞬揺らいだのが分かった。隠そうとしてる。でも、隠し通せるわけない。


「いや、悪いけど僕は知らない」


「嘘です」

「嘘じゃないよ」


「嘘です」

嘘だと言いきれる。だって、お父さんは目を合わせてくれないもん。つらそうな顔してるんだもん……。


「栞菜は、どこにいますか」

「親父が本当は知ってるってこと、分かってんだ。頼む、教えてくれ」


言わないでほしいと言われていることはわかっている。それでも聞きたい。会いたい。たとえ栞菜が会うことを望んでいなくても、今回は、今回だけは譲れない。


「栞菜が会いたくないと言ったと思います。でも、瞬君のお父さんだって気付いてるはずです。気持ちを言ったら、迷惑になるとか、会うのが怖いと思っていることに。だけど、それは私たちのことを気にしているってところもある。それに、迷惑か迷惑じゃないかなんて、栞菜が決めることじゃないです。それに、きっと栞菜は今、独りぼっちです」


「独りぼっち?僕は栞菜ちゃんを独りぼっちにしているつもりなんてないが」

そんなの瞬君のお父さんの思っていることでしかない。


「栞菜の周りが独りぼっちじゃないって思ってたって、栞菜の心は独りぼっちです。私や瞬君には、手紙を書いて距離をとろうとしている。瞬君のお父さんにだって、迷惑をかけたくないって、きっと思ってます」



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