あなたに出逢えた
「栞菜。聞こえる?そのままでいいよ。そのままでいいから聞いて?」

私は、ドアに手をついて栞菜にしゃべりかけた。


「ごめんね。一人にさせてごめんね。栞菜、本当は、栞菜の口から聞きたかったけど、私が思ったこと話すね。栞菜はきっと隠してるつもりだと思うけど、お母さん、もう会えなくなっちゃった……?」


すると、部屋の中で、何かが落ちる音がした。そして、ドアにぶつかる音。

「莉音……誰かに聞いた……?」

「聞いてないよ」

「そこに、宮野いる……?」

「……っ!いる」

「宮野……ごめん。今日は帰って?」

栞菜の弱々しい声。


「ああ。分かった。明日、来てもいいか?」

「うん……」

瞬君は、私に笑いかけると、この場を去った。


すると、ドアのカギが外されて、栞菜がひょこっと顔を出した。


「入って……」

栞菜は、泣き後を隠すように下を向いて、私を家に上げた。

「そこに座って」

栞菜は、ソファを指さした。


私はソファに腰かけて、栞菜を見た。栞菜は私の隣に座った。

二人とも無言。


どっちも話そうとはしない。


「……莉音、さっき言ったよね?」

栞菜が私に言った。


「何を?」


「私の母さんは、もう、会えなくなっちゃった?って……」

「うん」

栞菜は、私に抱き着いてきた。


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