あなたに出逢えた
「会えなくなっちゃた……!もう、私の名前、呼んでもらえなくなっちゃった……っ!」


やっぱり、ね……。


だから、あんなに苦しそうな文だったんだ……。


「せっかく、いっしょに住めた……のに、また、一緒に笑えるって……思ったのに……。でも、ママが……いなくなっちゃった……。それに……こんな顔で会ったら、莉音にも迷惑かけちゃうって、心配かけちゃうって……思ったら……。


宮野にも、慧さんにも顔見せられなくて……。ずっと、慧さんや宮野の前だ、泣いたり笑ったりしないようにしたの……。慧さんたちも辛いって思ったから……。


だけど、これ以上は、無理だって……思って……。独りぼっちになろうって思った……。そうすれば、慧さんも、娘だって思わなくなってくれるだろうって。宮野も忘れてくれるって……。莉音も、私のこと、裏切者って……思ってくれると、思って……」


「うん……」

私の胸の中でなく栞菜は、今まで見た中で、一番苦しそうだった。

誰にも頼れなくて、頼りたいけど、迷惑をかける気がして……。


ずっと、独りぼっちで、頑張ってたんだ。


「ママが……自分の気持ち、大事にしなさいって言ってた……でも、大事にできなかった……。ママがね……慧さんと結婚して……宮野はお兄ちゃんになった。だから……好きって気持ち……言っちゃだめなの……」


「うん」


「でも、気持ちが、消えなくて……どうしていいか分からなくて……」


言いたいことがいっぱいあるんだね。
言いたいことがいっぱいありすぎて、まとまってないもん。


「今は?」


「す、き……」

やっぱり。だから、瞬君には聞かれたくなかったんだね。



「お母さんは、栞菜が大好きなんじゃない?栞菜もお母さんが大好きなんでしょう?だあらこんなに悩んで、寂しくて……。でも、それって、いつかは乗り越えなきゃいけないことなんだよ」


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