あなたに出逢えた
そう、いつかは、乗り越えなくちゃいけない。誰かが死んでしまうのは、誰だって悲しい。


「いなくなっちゃった人が見ててうれしいのはどっちだと思う?大好きな人が泣いてる姿と笑っている姿」


「え……?」


栞菜は、顔を少し上げて私を見た。目は真っ赤で、頬には涙の跡が残っている。


「じゃあ、私が泣いてたら、どうしてほしい?」

「笑って……ほしい」


私は、栞菜に笑顔を見せて、栞菜の頭をそっと撫でた


「ね?栞菜のお母さんも一緒だと思うよ?大好きな栞菜が泣いてたら、笑ってほしいって思うと思うよ?私は、栞菜に笑ってほしい。私は、栞菜が泣くことが迷惑だなんて思わないよ?迷惑だから笑ってほしいんじゃなくて、大好きだから笑ってほしいんだ」


「大好きだから……?」

栞菜は首をかしげた。


「うん。大好きだから。大好きな人の笑顔を見てると、幸せな気持ちになるんだよ。栞菜は岡さんの笑顔を見て、幸せだって思わなかった?」


「……思った」

「じゃあ、笑わなきゃ。天国にいるお母さんに、精一杯の笑顔を見せなきゃ。それが、きっとお母さんの幸せなことだと思うよ」


私は、栞菜に言った。


「栞菜にずっと会いたかった。ずっとずっと会いたかった」


「私も……!」

栞菜は私をぎゅっとだきした。私もそれにこたえるように栞菜を強く抱きしめた。


「莉音。私が笑ったら、莉音もママも幸せになってくれる?」


「あったりまえじゃん。私や、お母さんだけじゃないよ。瞬君だって、瞬君のお父さんだって、みんな幸せだよ」


< 213 / 224 >

この作品をシェア

pagetop