ここのつ違いの恋愛目録
第1章 わたし、振られました。
別れと出会い
初めてできた彼氏は、私にとって初恋の人であり、初めての彼氏であり、初めて手を繋ぎ、初めてキスをして、デートはしなかったけど、初めて心も身体も結ばれた人であった。取り敢えず私の基準は全てその彼氏で出来上がったと言っても過言ではない。だからと言っては何だが、これが3回目の別れでもあった。
付き合っては別れを繰り返し、お互いに好きだと言いあった。
だけど、本気で好きだったのかと聞かれれば私は好きだった。
だが、彼の方は分からない、それだけ私と彼は一緒に居なかった。
その日私は学校が終わって彼の家に行った。彼は終始不機嫌で何を言っても仏頂面だった。なんだこいつと思った私は彼の出しっ放しの布団にくるまって彼の様子を見ていた。
暫くすると、彼のスマホの着信音が部屋に響いた。彼は届いたメッセージを見たあと
「ごめん、用事入った。
なんか、同じ中学の同級生が遊ぼって、
なんかあいつが大事な話があるからって。」
あいつ、とは前から知っていた。
彼に好意を持っている彼の元カノさん。
1ヶ月前の文化祭で彼と元カノさんが再開してから彼のスマホは元カノさんのメッセージでしきりに着信音が鳴っていたから、友達に元カノさんの同級生だという子が居たのでどんな子か聞いたりもしていた。
2週間前くらいの夜に彼と会い、公園で他愛のない話をしていた時に彼が突然真面目な顔をした。
「あのさ、今度中学の時の同級生と遊びに行くんだけど、その中に俺の元カノが居るんだけどさ、遊びに行ってもいい?」
勿論、嫌だった。
別れたといっても彼からの一方的な別れで元カノさんと別れたと彼は言っていたし、彼を誘おうと言ったのも、みんなで遊ぶ計画をしたのも元カノさんだと説明されたから、凄く心配だった。
だけど、一回だけという彼の言葉に私はいいよ、とそれだけを彼に伝えたのだった。
それ以来、元カノさんの話は彼の口からずっと聞いていた。
私はそれを聞いてなんで私とは遊んでくれないのに元カノさんと遊ぶのかとか、今は私と会ってるのだから、その話はやめてよと幾度となく思ったが言えなかった。
嫌われるのがとても怖かったから。
その元カノさんと会う、もう私は不貞腐れていたのだ。
いつもならばいばいする時のキスもせず、彼が行くのも見送らず、じゃあねとだけ言い残し、私は自分の家に帰るために足を進めた。
そんな私を彼はずっと見ていた。
今思えば、彼は行かないでと言って欲しかったのかもしれない。
だけど恋愛初心者の私には到底分からないことであった。
その夜、私のスマホに珍しく彼からのメッセージが届いた。
何だろうと、そのメッセージを見るとただ簡潔に、
「ごめん、別れよう。」
だけあった。
一体何が起こったのか私は分からず、でもこの短い文章は嫌でも目に入り脳に伝わった。
私は震える手で彼になんで?と返信した。
「なんか、疲れた。」
その後の事は覚えてない。
ただ次の日、私の目は赤く腫れていて、彼に分かった。だけ返信していた。
次の日、1週間前に1年続けていたバイトを辞めていたので、彼の事を早く忘れようと、もう泣きたくない、考えたくない、思い出したくないの一心でバイトを探した。
それを見た私の友達が人手不足だから私のバイト先に来ない?と誘ってくれた。
その日のうちに連絡を入れてくれて、夕方の4時くらいに面接をしてくれることになった。
失恋したばっかりの私を凄く心配してくれて、とても頼りになった。
約束の時間の10分前に友達のバイト先に着いた。食事処だった。
友達に案内されて裏口から中に入り、ここで待っててねと置いてある椅子に座らされた。
友達は建物の奥に消えていき、私はポツンとただその建物を見回していた。なんだか居心地が悪い。
ほんのすこししてから、少し小柄な男性が建物の奥から出てきた。
その男性の胸元には札があり店長と記されていた。
私は椅子から立つと男性は私の目の前で止まった。
「水月さん?」
「あ、はい。」
「こっち来て、面接するから。」
私と3センチぐらいしか変わらない身長、背中は広いけど小柄な方な体格、ちょっとつり目で、髪の毛がくるんとなっていた。だけど、どこか威圧感があって少し怖かった。緊張していたのもあるだろう。本当に居心地が悪くて居づらかった。
第一印象は怖い、だけだった。