怖がりな君と嘘つきな私
「…あれ?」
空いてる。
モンゴリアンチョッパーズの楽曲を口ずさみながら、マンションの鍵穴にキーを差し込み回すと手応えが全く感じられない。
そっとドアを開けて、中を覗き込むと、薄暗く冷えた部屋の奥、突き当たりのベッドからチラリと金髪頭が見えた。
「ちょっと、ナル? 仕事どうしたの?」
きつくなったハイヒールを片方ずつ脱ぎ捨てて部屋に入りながら、少し大きな声をかけた。
コートを脱ぎながらベッドに近づくと、ベッドの中からくぐもった声がする。
「休んだ」
「うそー。今日、モンゴリアンチョッパーズ出るから行こうと思ってたのに。てか、店は大丈夫なの?」
「拓海に任したから、へーき」
金髪頭のナルがもぞもぞと返事をする。
こもった声は、なんだかひどく心細げ。
なんかあったな。
私のピンクの枕に顔をうずめたまま、顔をあげないナルを見ながら、今回は何があったのだろう、と考える。
少なくとも昨夜電話で話した時は普通だった。
ナルの場合、普通といっても、かなりぶっ飛んでるんだけど、まぁいつも通りのナルだったことは間違いない。
「明日、花穂の好きなモンゴリアンチョッパーズだからな、来いよ。8時頃かな。着いたら、電話しろよ。ビールおごってやる」
そんなことを言っていた。
モンゴリアンチョッパーズ、ナルだって気に入ったし、かわいがってたし、楽しみにしていたはずなのに。
空いてる。
モンゴリアンチョッパーズの楽曲を口ずさみながら、マンションの鍵穴にキーを差し込み回すと手応えが全く感じられない。
そっとドアを開けて、中を覗き込むと、薄暗く冷えた部屋の奥、突き当たりのベッドからチラリと金髪頭が見えた。
「ちょっと、ナル? 仕事どうしたの?」
きつくなったハイヒールを片方ずつ脱ぎ捨てて部屋に入りながら、少し大きな声をかけた。
コートを脱ぎながらベッドに近づくと、ベッドの中からくぐもった声がする。
「休んだ」
「うそー。今日、モンゴリアンチョッパーズ出るから行こうと思ってたのに。てか、店は大丈夫なの?」
「拓海に任したから、へーき」
金髪頭のナルがもぞもぞと返事をする。
こもった声は、なんだかひどく心細げ。
なんかあったな。
私のピンクの枕に顔をうずめたまま、顔をあげないナルを見ながら、今回は何があったのだろう、と考える。
少なくとも昨夜電話で話した時は普通だった。
ナルの場合、普通といっても、かなりぶっ飛んでるんだけど、まぁいつも通りのナルだったことは間違いない。
「明日、花穂の好きなモンゴリアンチョッパーズだからな、来いよ。8時頃かな。着いたら、電話しろよ。ビールおごってやる」
そんなことを言っていた。
モンゴリアンチョッパーズ、ナルだって気に入ったし、かわいがってたし、楽しみにしていたはずなのに。