僕は悪にでもなる
それが何ヵ月も続いた。
はじめて現金をもらった感動がぬけず、あまりにも長く俺は騙されていた。
その間、収入は0。日増しに怒りと不安が増していく。
一時的に稼いだ金はずっと続くものだと思って豪遊してしまっていた。
手元には一切の現金がなくなってしまった。
心配する彼女。
俺はずっと会社が厳しくて給料をまってと言われているとごまかし、彼女からお金を借りていた。いらだちからか、彼女に借りた金でいつものように複数の場所で物を渡した帰りに飲んだくれてかえることが増えていく。
俺はただのくずになりつつあった。
彼女ともよく喧嘩をした。
彼女はただ俺を心配してくれているだけなのにそれが邪魔くさく思ってしまうようになった。あせりと、はずかしさ。それをつつかれているかのように思えて俺は大きな声をはってよく彼女にあたるようになってきた。
それでも彼女の愛は淡々とそそがれていた。
でもその頃もう俺はその愛はただ邪魔なだけに。
何度も指示書に書かれている電話番号にかけていたけど、次第に電話にでる男の言葉遣いがあらくなっていた。
「ひつこいな。払うっていってんだろ。黙って仕事しろ」
そう言って電話をきられる。
紹介と仲介をしてくれた元職場の先輩に電話をしたが、もうその番号は使われていない。
もう給料なんて払ってくれない。ただ一時的につかわれただけ。
怒りと絶望感。
でもこれ以上どつぼにはまるわけにはいかない。
こんな仕事をするようになってから彼女の母親にも、おばあちゃんにも会っていない。
呼ばれてもはずかしくていけない。申し訳なくていけない。
とても心配してくれていたそうだけど、その心配もあせりや不安、後悔を突かれているようで
嫌な気分がしていた。そして彼女には何度もどなり、金はかりっぱなし。
このままではいけないと、もうこの仕事はやめると決めて電話をしたがでない。
次の日、かわらずポストに投函されていたが、無視してあらたに仕事を探しに行った。
帰った時には指示書も物もなかった。電話をしてもまたでない。
また次の日ポストには指示書と物がある。
俺はまたあの過酷な労働に戻り、一からやり直そうとして、入れては回収される指示書と物を無視し続けた。
すると、ある日の夜。ガラスが割られていた。
それからもドアを蹴られ、のぞき穴から見ても誰もいない。
そんな嫌がらせが続く。
電話をしてもでない。
割られたガラスは彼女がお金を払って直してくれた。
ドアを蹴られる日々。心配する彼女には、警察にいった。こんなことされる心当たりないからおかしな奴がこのあたりにいるんだと適当にごまかしていた。
たまる怒りとストレス、そして恐怖。
心配して声をかける彼女にあたり、どなる日々。
強く、変わらず平然と愛をそそいでくれる彼女もよく泣くようになった。
喧嘩も増すばかり。
すると突然知らない番号からかかってきた。
「いい加減にしろよ。働け。」
そう言ってすぐに切られた。
俺はぶち切れた。
夜中回収に来るものを待ち、尾行して拠点まで後をつけた。
事務所にはいると、複数の男。真ん中には指揮をとっている男が座る高そうな机。
壁に飾られた日本刀。
「こいつを担当してたものは誰だ。」
そう言って尾行した男が裏に連れて行かれた。
「それで、何のようだ」
その声は電話にでる男の声。
「給料を払え、そして嫌がらせをやめろ」
すると男は立ち上がり、日本刀を持ち、俺の首につけた。
「つきあがるなよ。ガキ。ここにきた以上、返すわけにはいかんな。
極道はね、そんな甘い世界じゃないんだよ。なめてんのか!」
そう怒鳴る。
「お前から足をつこんできたんだろ。お前の意思で。そう簡単には抜けられんよ。
お前の女。よく家に来てるらしいな。これ以上なめたことをいうと殺すぞ!」
「おい、お前らこいつを監禁しろ。すきなように、殴ってこの世界をわからせてやれ!」
そう言って別の部屋に連れて行かれた。
殴られながら俺は思った。
確かに俺は浅はかだった。甘かった。これが現実。これが社会。
憎い、憎い、社会。
厳しい社会の現実にまけた自分と甘い話に乗って
騙された絶望感。自分を責める。
騙したこいつらへの憎しみ。
社会への憎しみ。
爆発しそうだった。
これが東京。そう結論付けた。
ぼこぼこになった俺、床についた乾いた血の上に指示書と物が投げられた。
「いってこい。にげられると思うなよ。」
俺はそれを手に受け渡し場所に言った。
それからしばらく、東京を恨み、自分を憎みながらも彼女に手出しさせないためにも続けたがもうこのくさった東京でいることに限界を感じ、東京で暮らすことを
俺はあきらめた。
荷物を宅配便で送り、部屋を引き払い、メールでこの1件を全て彼女に伝え別れを告げた。
田舎に帰る間ずっとなり続ける彼女からの電話。入り続けるメール。
くやしかった。絶え間ない彼女たちの愛にこたえられなかったこと、東京に負けたこと。
そして俺は田舎へと逃げた。
それっきり一度も会っていない。
それからずっと後悔ばかり。思い出すたびに、悔しかった。
はじめて見た地獄の中に美しく咲く花。
彼女と過ごした日々。
そしてもらった絶え間ない愛。
その愛にこたえられず、裏切り、逃げた俺。
この恩は一生かけても返せない。
この罪は一生かけても償いきれない。
もう何年も何年もたつのに、一度も忘れたことはない
今の自分にとってこの思い出は決意のたわもの。
その決意を抱いて眠りについた。
はじめて現金をもらった感動がぬけず、あまりにも長く俺は騙されていた。
その間、収入は0。日増しに怒りと不安が増していく。
一時的に稼いだ金はずっと続くものだと思って豪遊してしまっていた。
手元には一切の現金がなくなってしまった。
心配する彼女。
俺はずっと会社が厳しくて給料をまってと言われているとごまかし、彼女からお金を借りていた。いらだちからか、彼女に借りた金でいつものように複数の場所で物を渡した帰りに飲んだくれてかえることが増えていく。
俺はただのくずになりつつあった。
彼女ともよく喧嘩をした。
彼女はただ俺を心配してくれているだけなのにそれが邪魔くさく思ってしまうようになった。あせりと、はずかしさ。それをつつかれているかのように思えて俺は大きな声をはってよく彼女にあたるようになってきた。
それでも彼女の愛は淡々とそそがれていた。
でもその頃もう俺はその愛はただ邪魔なだけに。
何度も指示書に書かれている電話番号にかけていたけど、次第に電話にでる男の言葉遣いがあらくなっていた。
「ひつこいな。払うっていってんだろ。黙って仕事しろ」
そう言って電話をきられる。
紹介と仲介をしてくれた元職場の先輩に電話をしたが、もうその番号は使われていない。
もう給料なんて払ってくれない。ただ一時的につかわれただけ。
怒りと絶望感。
でもこれ以上どつぼにはまるわけにはいかない。
こんな仕事をするようになってから彼女の母親にも、おばあちゃんにも会っていない。
呼ばれてもはずかしくていけない。申し訳なくていけない。
とても心配してくれていたそうだけど、その心配もあせりや不安、後悔を突かれているようで
嫌な気分がしていた。そして彼女には何度もどなり、金はかりっぱなし。
このままではいけないと、もうこの仕事はやめると決めて電話をしたがでない。
次の日、かわらずポストに投函されていたが、無視してあらたに仕事を探しに行った。
帰った時には指示書も物もなかった。電話をしてもまたでない。
また次の日ポストには指示書と物がある。
俺はまたあの過酷な労働に戻り、一からやり直そうとして、入れては回収される指示書と物を無視し続けた。
すると、ある日の夜。ガラスが割られていた。
それからもドアを蹴られ、のぞき穴から見ても誰もいない。
そんな嫌がらせが続く。
電話をしてもでない。
割られたガラスは彼女がお金を払って直してくれた。
ドアを蹴られる日々。心配する彼女には、警察にいった。こんなことされる心当たりないからおかしな奴がこのあたりにいるんだと適当にごまかしていた。
たまる怒りとストレス、そして恐怖。
心配して声をかける彼女にあたり、どなる日々。
強く、変わらず平然と愛をそそいでくれる彼女もよく泣くようになった。
喧嘩も増すばかり。
すると突然知らない番号からかかってきた。
「いい加減にしろよ。働け。」
そう言ってすぐに切られた。
俺はぶち切れた。
夜中回収に来るものを待ち、尾行して拠点まで後をつけた。
事務所にはいると、複数の男。真ん中には指揮をとっている男が座る高そうな机。
壁に飾られた日本刀。
「こいつを担当してたものは誰だ。」
そう言って尾行した男が裏に連れて行かれた。
「それで、何のようだ」
その声は電話にでる男の声。
「給料を払え、そして嫌がらせをやめろ」
すると男は立ち上がり、日本刀を持ち、俺の首につけた。
「つきあがるなよ。ガキ。ここにきた以上、返すわけにはいかんな。
極道はね、そんな甘い世界じゃないんだよ。なめてんのか!」
そう怒鳴る。
「お前から足をつこんできたんだろ。お前の意思で。そう簡単には抜けられんよ。
お前の女。よく家に来てるらしいな。これ以上なめたことをいうと殺すぞ!」
「おい、お前らこいつを監禁しろ。すきなように、殴ってこの世界をわからせてやれ!」
そう言って別の部屋に連れて行かれた。
殴られながら俺は思った。
確かに俺は浅はかだった。甘かった。これが現実。これが社会。
憎い、憎い、社会。
厳しい社会の現実にまけた自分と甘い話に乗って
騙された絶望感。自分を責める。
騙したこいつらへの憎しみ。
社会への憎しみ。
爆発しそうだった。
これが東京。そう結論付けた。
ぼこぼこになった俺、床についた乾いた血の上に指示書と物が投げられた。
「いってこい。にげられると思うなよ。」
俺はそれを手に受け渡し場所に言った。
それからしばらく、東京を恨み、自分を憎みながらも彼女に手出しさせないためにも続けたがもうこのくさった東京でいることに限界を感じ、東京で暮らすことを
俺はあきらめた。
荷物を宅配便で送り、部屋を引き払い、メールでこの1件を全て彼女に伝え別れを告げた。
田舎に帰る間ずっとなり続ける彼女からの電話。入り続けるメール。
くやしかった。絶え間ない彼女たちの愛にこたえられなかったこと、東京に負けたこと。
そして俺は田舎へと逃げた。
それっきり一度も会っていない。
それからずっと後悔ばかり。思い出すたびに、悔しかった。
はじめて見た地獄の中に美しく咲く花。
彼女と過ごした日々。
そしてもらった絶え間ない愛。
その愛にこたえられず、裏切り、逃げた俺。
この恩は一生かけても返せない。
この罪は一生かけても償いきれない。
もう何年も何年もたつのに、一度も忘れたことはない
今の自分にとってこの思い出は決意のたわもの。
その決意を抱いて眠りについた。