僕は悪にでもなる
憎しみ
「どこへいくの?」
「ちょっと煙草を吸ってくる」
「うそでしょ。その目は違うわ」
俺は知らぬうちに険しい目つきをうかべていた。
「あそこにいくんでしょ。だめよ」
虹美が力づよく言った。
「あーそうだ。行かなくちゃいけない。」
「どうして」
「俺はお前と結婚したい。ずっと一緒に居たい。」
「一緒に居られるわ。」
「居られない。ケリをつけなくちゃ、いつか必ずあの悪は、
ほっておけば俺の大切なものに向けられる。
それが怖いんだ。」
「大丈夫。そんなことないわ」
「いや、あーいう連中は、必ずお前らにも手をだす。いつか必ず。」
「駄目よ!」
俺の手を強く掴んだ。
俺はその小さな手を振り払い、虹美は倒れ込んだ。
せっかく巡り合えた愛。
あったかい場所。
純粋な夢
それらをあの悪が邪魔をする。
そのいらだちが爆発し、強く強く虹美を突き飛ばしてしまった。
俺はそのまま部屋を飛び出し、あの場所へと走った。
しばらく突っ立っていると、浮かび上がる黒い影。
「やっぱり、またきたか」
「いい加減にしろよ。一体お前ら何なんだ」
何も言わない。
悔しさと憎しみが体に力を与える。
男に掴みかかり、発狂する。
「言えよ!!」
後ろから蹴りが入った。
俺は振り向き、その男の髪の毛を掴み、手にまいた。
そのまま頭突きを何度も何度もした。
音を立てて、バチバチと。
垂れ流れる血、あれる息。
どれだけ強く複数の男が掴みかかりはなそうとひっぱっても
手にまいた髪の毛を離さない。
バチバチを頭皮が音をたてて、髪の毛が抜ける。
「離せーーーー」
離さない。どれだけ殴られても離さない。
「言えよ!言うまで離さない!」
「いてーよ。はなせー」
バリバリと髪の毛を抜ける。
どん。
みぞうちを殴られた。
息を失った俺は、手にまいた髪の毛を離してしまった。
大量に抜けた髪
頭から血を流し、頭皮をおさえる男。
「もういい。行こう!」
カメラで撮影をしていた男が言ってまた去って行った。
「一体なんだんだ。くそ。くそーーー」
倒れ込んだ俺の元に、追いかけてきていた虹美が着いた。
悔しさで泣く俺。
優しく抱く虹美。
「もういい。やめて。お願いだからやめて。」
俺は何も言い返せなかった。
震える小さな体。
涙を流し小刻みに揺れる肩。
抱き返すしかできなかった。
それからも俺はやっぱり悪が怖くて虹美にだまっていつもの場所にむかう。
覚悟を決めて向かう。
俺はついに、包丁を手に取った。
この頃の俺は、もう愛から離れ憎しみにおぼれてた。
いつものようにあの場所に着いた。
ずっと立っているが。こない。。。
おかしい。
なぜこない。
はじめてこなかった。
次の日も来なかった。
なぜだ。なぜだと、うずく憎しみと共にまたあの場所に着いて待った。
「きたっ!」
黒影が浮かび上がった。
男達は包丁をもった俺をみて、引き返そうとしている。
「待てよ。お前らいい加減にしろよ。」
「いくぞ」
一人の男がそう言った瞬間。複数人の男達がずらかろうとした時
俺は一人を追いかけ、背中を上から下へと刃を振り下ろした。
「あーーーーー」
発狂しながら倒れた。
俺はその男の上にのり、喉に刃をつける。
「いえよ。お前らの裏に誰がいる。なぜ俺を襲う。言えよ。殺すぞ」
そう言って刃の先を喉に突き刺し、わずかばかり血が垂れ流れた。
何も言わない。
ここまでしても何も言わない。
なぜだ。
他の男達はみんな逃げていなかった。
「言わないならこうするしかないな。」
そういって俺は男の手を掴み指を斬り落とした。
「あーーーーーー」
発狂する男。
その男の切り落とした指を手に取り、
男を離してやった。
手をおさえながら、発狂しながら走って逃げて行った。
俺は斬り落とした指をポケットに入れて家に向かった。
すると電話が鳴った。
「もしもし」
「幸一、今どこだ。」
「家だ」
「ちょっと俺の保護観察官の弁護士のとこに来てくれないか?」
「あーわかった。」
「住所はラインで送る」
「了解。」
俺はとりあえず受け取った住所をグーグルマップで検索し
弁護士事務所に向かうことにした。
着いた弁護士事務所。
虹美、雪美、空美、直樹、かずみさん
みんな揃っていた。
「なんでみんないるの?」
「虹美が心配してここに相談に来てたんだ」
そう直樹が言った。
他に2人の男がいた。
一人は直樹の保護観察官である弁護士。
「はじめまして、○○といいます。話は全部聞いているよ。
そしてこいつは私の弟。刑事だ。力になる」
そう言ってもう一人の男を紹介した。
「話を聞いてチームを組んで現場をしばらく張っていたんだ。」
「あーそれで、こなかったんだな。
それで今日は?」
「今日は、署の事情で張り込みはできなかった。でも家にいたんでしょ」
少し動揺しながら答える。
「いや、今日も現場に行ってきた。今日はちゃんと来たよ。
すっかりあんたのチームの行動を読まれているようだな。」
「今日、張り込んでなかったの!?」
そうかずみさんがどなった。
「えーー」
動揺する刑事。
「これやるよ。これでケリがつくだろ。」
そう言ってポケットに入れた切り落とした指を刑事に投げつけた。
雪美がとっさに空美の目をすふさぐ。
「何それ!」
虹美が叫ぶ。
「あー。調べはつけられるが、あんたも立件されるよ。」
「いいんだ。数年務所にはいったって。それで数十年の幸せが手に入るなら。」
「だめよ!幸一!だめよ。。。」
虹美が泣いている。
「君がそういうなら調べてみるが」
「頼みます。」
そう言って俺は事務所を出て行った。
「だめよ!やめて!」
虹美が叫びながら追いかけてきた。
「虹美。こうするしかないんだ。こうしなくちゃずっと一緒にいられない。
たった1,2年だよ。待っててくれよ。
それからずっとずっと一緒にいられる。
なんの悪もなく、悪に恐れることなく
愛だけを見つめて生きていくことができる。
出てきたら結婚しよう!結婚して子供を作って幸せな家庭を二人で作ろう!」
そう言ったが、虹美はただ、ただ泣いている。
それから俺は覚悟を決め、調べの結果をずっとずっと待った。
弁護士から電話がなった。
そして調べの結果を聞きに事務所に向かった。
「まあ、座って。」
そう弁護士が言った。
ふかふかとしたソファーに腰をかけた。
向かいには弁護士と刑事が座っている。
その向こうに見える壁にかかった日本刀が気になった。
「あの刀は?」
「あーあれは、私達剣道の有段者なんだ。ちゃんと許可を取っている。」
「そうですか。それで結果はわかりましたか?」
「それが、身元不明だった。」
そう刑事が言った。
「なんでだよー!」
怒りが爆発し、無駄に覚悟を決めていた自分の運命を恨み
高そうなガラスの机をひっくり返した!
「じゃあ結局わからないのか?」
下をむく、二人。
「これからどうすればいいなんだ。せっかく指まで切り落としてきたのに。
また現場に言っても何もわからない。
あんたらが張ったって見破られている。
どうすればいいだよ。」
「とにかく、君はもう現場には行かないでくれ。みんな心配しているから」
そう弁護が言う。
「見破られないよう作戦を練り直し慎重に捜査を進めるから少しの間
待っててくれ。」
そう刑事が言った。
俺は何も言わずに部屋をでた。
それからずっと待った。
一向に前へ進まない。
甘く抱いた夢に一向に近付けない。
むしろ遠ざかっていく。
俺がやっと見つけた場所。夢を奪うあの悪への恨みだけが膨らんでいく。
そして純粋にいだいた夢を食いつぶしていく。
行く待っても何も変わらない。憎しみが増すばかり。
憎しみはやがて俺の精神を破壊し、廃人化していく。
仕事も辞めて、ひきこもるようになった。
「ちょっと煙草を吸ってくる」
「うそでしょ。その目は違うわ」
俺は知らぬうちに険しい目つきをうかべていた。
「あそこにいくんでしょ。だめよ」
虹美が力づよく言った。
「あーそうだ。行かなくちゃいけない。」
「どうして」
「俺はお前と結婚したい。ずっと一緒に居たい。」
「一緒に居られるわ。」
「居られない。ケリをつけなくちゃ、いつか必ずあの悪は、
ほっておけば俺の大切なものに向けられる。
それが怖いんだ。」
「大丈夫。そんなことないわ」
「いや、あーいう連中は、必ずお前らにも手をだす。いつか必ず。」
「駄目よ!」
俺の手を強く掴んだ。
俺はその小さな手を振り払い、虹美は倒れ込んだ。
せっかく巡り合えた愛。
あったかい場所。
純粋な夢
それらをあの悪が邪魔をする。
そのいらだちが爆発し、強く強く虹美を突き飛ばしてしまった。
俺はそのまま部屋を飛び出し、あの場所へと走った。
しばらく突っ立っていると、浮かび上がる黒い影。
「やっぱり、またきたか」
「いい加減にしろよ。一体お前ら何なんだ」
何も言わない。
悔しさと憎しみが体に力を与える。
男に掴みかかり、発狂する。
「言えよ!!」
後ろから蹴りが入った。
俺は振り向き、その男の髪の毛を掴み、手にまいた。
そのまま頭突きを何度も何度もした。
音を立てて、バチバチと。
垂れ流れる血、あれる息。
どれだけ強く複数の男が掴みかかりはなそうとひっぱっても
手にまいた髪の毛を離さない。
バチバチを頭皮が音をたてて、髪の毛が抜ける。
「離せーーーー」
離さない。どれだけ殴られても離さない。
「言えよ!言うまで離さない!」
「いてーよ。はなせー」
バリバリと髪の毛を抜ける。
どん。
みぞうちを殴られた。
息を失った俺は、手にまいた髪の毛を離してしまった。
大量に抜けた髪
頭から血を流し、頭皮をおさえる男。
「もういい。行こう!」
カメラで撮影をしていた男が言ってまた去って行った。
「一体なんだんだ。くそ。くそーーー」
倒れ込んだ俺の元に、追いかけてきていた虹美が着いた。
悔しさで泣く俺。
優しく抱く虹美。
「もういい。やめて。お願いだからやめて。」
俺は何も言い返せなかった。
震える小さな体。
涙を流し小刻みに揺れる肩。
抱き返すしかできなかった。
それからも俺はやっぱり悪が怖くて虹美にだまっていつもの場所にむかう。
覚悟を決めて向かう。
俺はついに、包丁を手に取った。
この頃の俺は、もう愛から離れ憎しみにおぼれてた。
いつものようにあの場所に着いた。
ずっと立っているが。こない。。。
おかしい。
なぜこない。
はじめてこなかった。
次の日も来なかった。
なぜだ。なぜだと、うずく憎しみと共にまたあの場所に着いて待った。
「きたっ!」
黒影が浮かび上がった。
男達は包丁をもった俺をみて、引き返そうとしている。
「待てよ。お前らいい加減にしろよ。」
「いくぞ」
一人の男がそう言った瞬間。複数人の男達がずらかろうとした時
俺は一人を追いかけ、背中を上から下へと刃を振り下ろした。
「あーーーーー」
発狂しながら倒れた。
俺はその男の上にのり、喉に刃をつける。
「いえよ。お前らの裏に誰がいる。なぜ俺を襲う。言えよ。殺すぞ」
そう言って刃の先を喉に突き刺し、わずかばかり血が垂れ流れた。
何も言わない。
ここまでしても何も言わない。
なぜだ。
他の男達はみんな逃げていなかった。
「言わないならこうするしかないな。」
そういって俺は男の手を掴み指を斬り落とした。
「あーーーーーー」
発狂する男。
その男の切り落とした指を手に取り、
男を離してやった。
手をおさえながら、発狂しながら走って逃げて行った。
俺は斬り落とした指をポケットに入れて家に向かった。
すると電話が鳴った。
「もしもし」
「幸一、今どこだ。」
「家だ」
「ちょっと俺の保護観察官の弁護士のとこに来てくれないか?」
「あーわかった。」
「住所はラインで送る」
「了解。」
俺はとりあえず受け取った住所をグーグルマップで検索し
弁護士事務所に向かうことにした。
着いた弁護士事務所。
虹美、雪美、空美、直樹、かずみさん
みんな揃っていた。
「なんでみんないるの?」
「虹美が心配してここに相談に来てたんだ」
そう直樹が言った。
他に2人の男がいた。
一人は直樹の保護観察官である弁護士。
「はじめまして、○○といいます。話は全部聞いているよ。
そしてこいつは私の弟。刑事だ。力になる」
そう言ってもう一人の男を紹介した。
「話を聞いてチームを組んで現場をしばらく張っていたんだ。」
「あーそれで、こなかったんだな。
それで今日は?」
「今日は、署の事情で張り込みはできなかった。でも家にいたんでしょ」
少し動揺しながら答える。
「いや、今日も現場に行ってきた。今日はちゃんと来たよ。
すっかりあんたのチームの行動を読まれているようだな。」
「今日、張り込んでなかったの!?」
そうかずみさんがどなった。
「えーー」
動揺する刑事。
「これやるよ。これでケリがつくだろ。」
そう言ってポケットに入れた切り落とした指を刑事に投げつけた。
雪美がとっさに空美の目をすふさぐ。
「何それ!」
虹美が叫ぶ。
「あー。調べはつけられるが、あんたも立件されるよ。」
「いいんだ。数年務所にはいったって。それで数十年の幸せが手に入るなら。」
「だめよ!幸一!だめよ。。。」
虹美が泣いている。
「君がそういうなら調べてみるが」
「頼みます。」
そう言って俺は事務所を出て行った。
「だめよ!やめて!」
虹美が叫びながら追いかけてきた。
「虹美。こうするしかないんだ。こうしなくちゃずっと一緒にいられない。
たった1,2年だよ。待っててくれよ。
それからずっとずっと一緒にいられる。
なんの悪もなく、悪に恐れることなく
愛だけを見つめて生きていくことができる。
出てきたら結婚しよう!結婚して子供を作って幸せな家庭を二人で作ろう!」
そう言ったが、虹美はただ、ただ泣いている。
それから俺は覚悟を決め、調べの結果をずっとずっと待った。
弁護士から電話がなった。
そして調べの結果を聞きに事務所に向かった。
「まあ、座って。」
そう弁護士が言った。
ふかふかとしたソファーに腰をかけた。
向かいには弁護士と刑事が座っている。
その向こうに見える壁にかかった日本刀が気になった。
「あの刀は?」
「あーあれは、私達剣道の有段者なんだ。ちゃんと許可を取っている。」
「そうですか。それで結果はわかりましたか?」
「それが、身元不明だった。」
そう刑事が言った。
「なんでだよー!」
怒りが爆発し、無駄に覚悟を決めていた自分の運命を恨み
高そうなガラスの机をひっくり返した!
「じゃあ結局わからないのか?」
下をむく、二人。
「これからどうすればいいなんだ。せっかく指まで切り落としてきたのに。
また現場に言っても何もわからない。
あんたらが張ったって見破られている。
どうすればいいだよ。」
「とにかく、君はもう現場には行かないでくれ。みんな心配しているから」
そう弁護が言う。
「見破られないよう作戦を練り直し慎重に捜査を進めるから少しの間
待っててくれ。」
そう刑事が言った。
俺は何も言わずに部屋をでた。
それからずっと待った。
一向に前へ進まない。
甘く抱いた夢に一向に近付けない。
むしろ遠ざかっていく。
俺がやっと見つけた場所。夢を奪うあの悪への恨みだけが膨らんでいく。
そして純粋にいだいた夢を食いつぶしていく。
行く待っても何も変わらない。憎しみが増すばかり。
憎しみはやがて俺の精神を破壊し、廃人化していく。
仕事も辞めて、ひきこもるようになった。