僕は悪にでもなる
桜公園
桜公園
4人の遺骨を右手に、空美の小さな手を左手に。
ぼくはふらりとふらりと歩いている。
空美はただなにも言わす、僕の手を捕まえて小さな歩幅で歩いている。
僕らは知らない間に、いつもの公園へとむかっていた。
公園についたがまだ桜は咲きそうにない。
「早く、この桜を空美にみせてやりてーなー」
そう心でつぶやき公園にはいっていった。
砂場では空美とよく似た年頃の子どもたちがたくさんいて
遊んでいる。
空美はそれを見てまっすぐに砂場に向かって走って行った。
僕はいつものベンチに腰をかけて、空美の楽しそうな笑顔をながめていた。
「みんな母親がついてんなー。」
そう悲しくつぶやいた。
でもあの子は実の母も父もいない。
そんな環境の中幾度と困難や憎しみ、恨みに出くわしていくだろう。
俺らのように。
お前だけは負けちゃーいけない。どれだけの悪に出くわそうとも恨んじゃいけない。
強く生きていくんだ。そう思って空美を眺めていた。
空美は一人で遊んでいる。他の子たちの顔色を伺いながら。
それなりに親心っぽいものが俺の中に芽生えたがやっぱり心配になり
腰をあげようとした時一人の少女が砂遊びをする道具を空美にさしだした。
空美はにっこりと力が抜けて安心したようにそれをうけとった。
それを見て俺もにっこりとほほ笑み、安心してベンチに座り見届けた。
するとその女の子の横にいた母親が俺の方に向かって歩いてきた。
俺は、空美に道具をかしてくれたこともあり、軽くえしゃくをした。
母親は何も言わず俺の座るベンチに腰をかける。
「桜はまだ、さかないね。」
そう言った。
いきなり横に座っていきなりしゃべりかけてきた。
とりあえず適当に返事を返した。
「そうですね。」
「ここの桜はきれいんでしょ。」
「えー。きれいです」
「私、まだ見たことないのよね」
そう女が言った。
俺は公園に立ち並ぶ木々たちを眺め、はじめてかずみさんに連れられて
みたあの幻想的な桜を思い出した。
もう少しでまた見える。空美に見せられる。
そう思った。
「あの子孤児だったの。」
「はい?」
「私の子じゃないの。私も孤児だった。その私が孤児をひきとったの」
「そ、そうなんですか。」
いきなりシビアなことをあまりにも率直に軽く告白してきた。
別に聞いてもいないのに。。。。。
でも空美を見ていると、ごくごく普通に
「あの子もか。内のも俺の子じゃないんです。友人から預かってます」と
思わず返してしまった。
「そうなの」
女は微笑みながら言った。
少し沈黙が続き、二人は子供たちを眺めていた。
この女もいろいろあったんだな。
見えやしないが、いろんな憎しみに出会い、恨みや悪と闘ってきたんだな。
その女が孤児を引き取り、今はあんなにきれいな笑顔で目の前で遊んでいる。
気付かれないように俺は女の横顔を横目でみた。
幸せそうに微笑み子供を見ている。
「こいつはいろんなものを乗り越えてあの子に愛をつないだか。」
そう心に声が鳴った。
悪を断ち切り、愛をつなぎ、その子が今また空美に愛をつなぐ。
するとまた女が思いもよらぬことを言ってきた。
まるで心を悟られたかのように
「あんたもいろいろあったんでしょ。でもね。あの子に悪を伝えたらだめなのよ。
親がどんなに悪人でも、社会がどんなに悪でも、生まれてくる子はみんなきれいなの。
この社会では悪はなくならないわ。いくらでも出くわす。それでも、どんな環境でも
強く、きれいな心を守れる強い子にあの子らを育てたいね。」
なんだ、、、こいつ。。。
まあでもその通りだ。そう思いまた適当に返す。
「そうですね。」
もう一度女の横顔を見ると、思ってた以上に若い。
若いのにシビアなことを言うな。。。。
それと何かがおかしい。
そう思いながら見ていると
女が「その遺骨、手を合わさせてもらってもいい?」
「あー。どうぞ」
反射的に返したが、普通ビックリするか、何か聞いてくるだろう。そう思った。
ただ、かずみさんとはじめてきたこの公園に、ふらっと立ち寄っただけなのに。偶然あったのではない。俺を待っていたかのような。誰が糸を引いている。
どこまで知っているのかわからないが、俺達に起こった悲劇を知っているような気がする。そしてこいつは誰。
4人の遺骨に向かって手を合わせる女を見ながら考えた。
すると予想が的中した答えが返ってきた。
遺骨にむかって。
「かずみさん。」
「お前誰だ。そう言えば、、、かずみさんを刺してしまった時、「いきなさい」と叫んだあの女刑事。。。」
そう女に言った。
「お前、どこまで知っている?」
「全部よ」
「なぜ?どこで知った?誰から聞いた?」
「かずみさん、直樹君、そしてあの弁護士よ。そして私は、あなたをあの後車に乗せて、留置場にはいってしまったあなたを空美ちゃんに合わせた刑事の嫁。」
「なんでお前が、直樹達?。」
女は何も言わず、ベンチに腰をかける。
「かずみさんはねえ。あんたが半殺しにした、○○におかされた子の親だよ。」
俺は口を開けたまんま。まわりの音が消え、鼓動だけが聞こえてくる。
「かずみさんはね。娘となんの関係もないあんたが、娘を殺した奴に天罰を下した。そんなあんたにずっとずっと感謝していたの。そして調べて、あんたのいる少年院をつきとめてボランティアとして接触したのよ。」
はじめておばちゃんと会った時を思い出した。
「いや、あの子は死んでなかったはず。」
「死んだのよ。あの後、数時間後病院で。薬物過剰摂取で。」
少女の涙を思い出す。
「かずみさんはあんたの生い立ちから調べて、亡きあんたの母親の友人、親戚、仕事仲間。それで生き別れた私とあんたのことを知って私と出会ったの」
「俺とお前が何だって言うんだよ。」
「兄弟よ。」
しーん。
時が止まった。。。
「は?」
「私とあんたは生き別れた兄弟。父は同じ、腹違い。しかも、その父は人殺し。
それを知ったかずみさんは弁護士に依頼して行方知らずの私の居場所をさがした。
名前だけわかれば見つけるのは簡単よ。殺人犯の子だから。全て記録に残っている。
そして私はかずみさん。」
「ちょっと待て!!一気に聞きすぎてわけわかんなくなった。。。ちょっと整理する」
「まず、生まれた時から母しかしらない。
父が人殺し?。。。」
私達の父は極道。あんたの母はまるで透き通った水晶のように、どんな悪意も美しさに吸い込まれて、洗浄される。そんな目をしていたと父が私にいったことがあった。そんな女性と恋をしたの。でもね。私達の父は極道だけど不器用でまっすぐな人だわ。あんたの母を極道の道に引きずることができず、別れをつげた。
まさか、お腹に子を宿していたなんて私も父も知らなかったけど。
あんたの母は、そんな純粋な父の決断に重みを残さぬよう、お腹にいる子のためにと何も言わずに田舎に帰り、父は極道の娘と政略結婚。そして出来た子が私。」
「てことは、お前妹か?」
俺は死ぬ前に泣きながら言った母の言葉を思い出した。
「幸一、ごめんね。あのまっすぐな人のように育ってほしいと、その心を邪魔にならないように、私が守る。その環境を守る。そう決めたのに、できなかった」
うるっと。涙が。こみあげて爆発しそうな感情がわきあがってくる。
「なんでお前が孤児?」
父が所属していた組が年おりを食い物にするしのぎをはじめたの。まっすぐな父は許せなかった。なんどもなんども反対した。でも極道は組長絶対。完璧縦社会。たえてたえて組の方針に従い仕事をした。でも父はもう我慢できなかった。。。けじめをつけて足を洗えばいいものの、自分だけがぬけてかたぎになってもこのしのぎはなくならない。
現場の実態、状況を全て知っている父はそれすらも許せなかった。
不器用な父はちゃかを手に事務所を襲ってたくさんの仲間を殺し、最後には組長の頭までとってしまったの。
残された私たちには大迷惑。極道に追われ逃げ回る日々。疲れた母は私を施設にあずけどこかに逃げて行った。それから一度も施設に戻ってくることはなかった。
私は孤独と怒りで凍りつくような夜を数えて、悪と悪の間に挟まれて生きてきた。
恨んだわ。憎んだわ。自分の人生を。自分の環境を。
でもね。
怒りが悲しみに変わった時私はどこかで愛を求めた。
絶望の中に光を探したように。
ある日生まれたばかりのあの子が施設にきたの。きれいな笑顔。人は生まれた時はみんなキレイ。でもいきる社会は悪だらけ。その中で悪を断ち切り愛をつなぐために生きていく。私は必死で勉強し、公務員試験を受けたわ。無事合格し就職が決まった時、
私は決めたの。この子を悪に負けない強い子に育てたい。それが悪を断ち切り愛をつなぐ。
そしてあの子を連れて施設をでた。」
「俺のおやじ。。。」
そうつぶやいたが、何より妹の生い立ちと過去、そして強さに衝撃を受けた。
「父と会って全てを話したわ。父は尋常なく泣いていた。
そして何度も何度も言っていたわ。」
「俺に息子がいるのか。息子がいるのか。」
あんたの経緯をしった父は、
「俺に似て不器用だから、あいつを守ってくれ。頼むから守ってくれ。悪から遠ざけてくれ。俺みたいにならないように。」
わずかな隙間から手を出し強く強く握って。
そしてもう一つ聞かせてくれと。
「俺の愛した女に、手を出した男。わが息子と悪に引きづりおろしたその男。名前だけでも」と
「私達の父。そしてあんたの母。ここで永遠の愛を誓ったのよ。」
「えっ」
「ここ?」
「あんたの尻の下。見てみな」
あわてて俺は腰をすべらせて、ケツのしたを見た。古びたベンチに何かの文字が薄く。
汚れたほこりやどろ、錆を手で必死でこすった。
次第に文字が浮き上がってくる。
4人の遺骨を右手に、空美の小さな手を左手に。
ぼくはふらりとふらりと歩いている。
空美はただなにも言わす、僕の手を捕まえて小さな歩幅で歩いている。
僕らは知らない間に、いつもの公園へとむかっていた。
公園についたがまだ桜は咲きそうにない。
「早く、この桜を空美にみせてやりてーなー」
そう心でつぶやき公園にはいっていった。
砂場では空美とよく似た年頃の子どもたちがたくさんいて
遊んでいる。
空美はそれを見てまっすぐに砂場に向かって走って行った。
僕はいつものベンチに腰をかけて、空美の楽しそうな笑顔をながめていた。
「みんな母親がついてんなー。」
そう悲しくつぶやいた。
でもあの子は実の母も父もいない。
そんな環境の中幾度と困難や憎しみ、恨みに出くわしていくだろう。
俺らのように。
お前だけは負けちゃーいけない。どれだけの悪に出くわそうとも恨んじゃいけない。
強く生きていくんだ。そう思って空美を眺めていた。
空美は一人で遊んでいる。他の子たちの顔色を伺いながら。
それなりに親心っぽいものが俺の中に芽生えたがやっぱり心配になり
腰をあげようとした時一人の少女が砂遊びをする道具を空美にさしだした。
空美はにっこりと力が抜けて安心したようにそれをうけとった。
それを見て俺もにっこりとほほ笑み、安心してベンチに座り見届けた。
するとその女の子の横にいた母親が俺の方に向かって歩いてきた。
俺は、空美に道具をかしてくれたこともあり、軽くえしゃくをした。
母親は何も言わず俺の座るベンチに腰をかける。
「桜はまだ、さかないね。」
そう言った。
いきなり横に座っていきなりしゃべりかけてきた。
とりあえず適当に返事を返した。
「そうですね。」
「ここの桜はきれいんでしょ。」
「えー。きれいです」
「私、まだ見たことないのよね」
そう女が言った。
俺は公園に立ち並ぶ木々たちを眺め、はじめてかずみさんに連れられて
みたあの幻想的な桜を思い出した。
もう少しでまた見える。空美に見せられる。
そう思った。
「あの子孤児だったの。」
「はい?」
「私の子じゃないの。私も孤児だった。その私が孤児をひきとったの」
「そ、そうなんですか。」
いきなりシビアなことをあまりにも率直に軽く告白してきた。
別に聞いてもいないのに。。。。。
でも空美を見ていると、ごくごく普通に
「あの子もか。内のも俺の子じゃないんです。友人から預かってます」と
思わず返してしまった。
「そうなの」
女は微笑みながら言った。
少し沈黙が続き、二人は子供たちを眺めていた。
この女もいろいろあったんだな。
見えやしないが、いろんな憎しみに出会い、恨みや悪と闘ってきたんだな。
その女が孤児を引き取り、今はあんなにきれいな笑顔で目の前で遊んでいる。
気付かれないように俺は女の横顔を横目でみた。
幸せそうに微笑み子供を見ている。
「こいつはいろんなものを乗り越えてあの子に愛をつないだか。」
そう心に声が鳴った。
悪を断ち切り、愛をつなぎ、その子が今また空美に愛をつなぐ。
するとまた女が思いもよらぬことを言ってきた。
まるで心を悟られたかのように
「あんたもいろいろあったんでしょ。でもね。あの子に悪を伝えたらだめなのよ。
親がどんなに悪人でも、社会がどんなに悪でも、生まれてくる子はみんなきれいなの。
この社会では悪はなくならないわ。いくらでも出くわす。それでも、どんな環境でも
強く、きれいな心を守れる強い子にあの子らを育てたいね。」
なんだ、、、こいつ。。。
まあでもその通りだ。そう思いまた適当に返す。
「そうですね。」
もう一度女の横顔を見ると、思ってた以上に若い。
若いのにシビアなことを言うな。。。。
それと何かがおかしい。
そう思いながら見ていると
女が「その遺骨、手を合わさせてもらってもいい?」
「あー。どうぞ」
反射的に返したが、普通ビックリするか、何か聞いてくるだろう。そう思った。
ただ、かずみさんとはじめてきたこの公園に、ふらっと立ち寄っただけなのに。偶然あったのではない。俺を待っていたかのような。誰が糸を引いている。
どこまで知っているのかわからないが、俺達に起こった悲劇を知っているような気がする。そしてこいつは誰。
4人の遺骨に向かって手を合わせる女を見ながら考えた。
すると予想が的中した答えが返ってきた。
遺骨にむかって。
「かずみさん。」
「お前誰だ。そう言えば、、、かずみさんを刺してしまった時、「いきなさい」と叫んだあの女刑事。。。」
そう女に言った。
「お前、どこまで知っている?」
「全部よ」
「なぜ?どこで知った?誰から聞いた?」
「かずみさん、直樹君、そしてあの弁護士よ。そして私は、あなたをあの後車に乗せて、留置場にはいってしまったあなたを空美ちゃんに合わせた刑事の嫁。」
「なんでお前が、直樹達?。」
女は何も言わず、ベンチに腰をかける。
「かずみさんはねえ。あんたが半殺しにした、○○におかされた子の親だよ。」
俺は口を開けたまんま。まわりの音が消え、鼓動だけが聞こえてくる。
「かずみさんはね。娘となんの関係もないあんたが、娘を殺した奴に天罰を下した。そんなあんたにずっとずっと感謝していたの。そして調べて、あんたのいる少年院をつきとめてボランティアとして接触したのよ。」
はじめておばちゃんと会った時を思い出した。
「いや、あの子は死んでなかったはず。」
「死んだのよ。あの後、数時間後病院で。薬物過剰摂取で。」
少女の涙を思い出す。
「かずみさんはあんたの生い立ちから調べて、亡きあんたの母親の友人、親戚、仕事仲間。それで生き別れた私とあんたのことを知って私と出会ったの」
「俺とお前が何だって言うんだよ。」
「兄弟よ。」
しーん。
時が止まった。。。
「は?」
「私とあんたは生き別れた兄弟。父は同じ、腹違い。しかも、その父は人殺し。
それを知ったかずみさんは弁護士に依頼して行方知らずの私の居場所をさがした。
名前だけわかれば見つけるのは簡単よ。殺人犯の子だから。全て記録に残っている。
そして私はかずみさん。」
「ちょっと待て!!一気に聞きすぎてわけわかんなくなった。。。ちょっと整理する」
「まず、生まれた時から母しかしらない。
父が人殺し?。。。」
私達の父は極道。あんたの母はまるで透き通った水晶のように、どんな悪意も美しさに吸い込まれて、洗浄される。そんな目をしていたと父が私にいったことがあった。そんな女性と恋をしたの。でもね。私達の父は極道だけど不器用でまっすぐな人だわ。あんたの母を極道の道に引きずることができず、別れをつげた。
まさか、お腹に子を宿していたなんて私も父も知らなかったけど。
あんたの母は、そんな純粋な父の決断に重みを残さぬよう、お腹にいる子のためにと何も言わずに田舎に帰り、父は極道の娘と政略結婚。そして出来た子が私。」
「てことは、お前妹か?」
俺は死ぬ前に泣きながら言った母の言葉を思い出した。
「幸一、ごめんね。あのまっすぐな人のように育ってほしいと、その心を邪魔にならないように、私が守る。その環境を守る。そう決めたのに、できなかった」
うるっと。涙が。こみあげて爆発しそうな感情がわきあがってくる。
「なんでお前が孤児?」
父が所属していた組が年おりを食い物にするしのぎをはじめたの。まっすぐな父は許せなかった。なんどもなんども反対した。でも極道は組長絶対。完璧縦社会。たえてたえて組の方針に従い仕事をした。でも父はもう我慢できなかった。。。けじめをつけて足を洗えばいいものの、自分だけがぬけてかたぎになってもこのしのぎはなくならない。
現場の実態、状況を全て知っている父はそれすらも許せなかった。
不器用な父はちゃかを手に事務所を襲ってたくさんの仲間を殺し、最後には組長の頭までとってしまったの。
残された私たちには大迷惑。極道に追われ逃げ回る日々。疲れた母は私を施設にあずけどこかに逃げて行った。それから一度も施設に戻ってくることはなかった。
私は孤独と怒りで凍りつくような夜を数えて、悪と悪の間に挟まれて生きてきた。
恨んだわ。憎んだわ。自分の人生を。自分の環境を。
でもね。
怒りが悲しみに変わった時私はどこかで愛を求めた。
絶望の中に光を探したように。
ある日生まれたばかりのあの子が施設にきたの。きれいな笑顔。人は生まれた時はみんなキレイ。でもいきる社会は悪だらけ。その中で悪を断ち切り愛をつなぐために生きていく。私は必死で勉強し、公務員試験を受けたわ。無事合格し就職が決まった時、
私は決めたの。この子を悪に負けない強い子に育てたい。それが悪を断ち切り愛をつなぐ。
そしてあの子を連れて施設をでた。」
「俺のおやじ。。。」
そうつぶやいたが、何より妹の生い立ちと過去、そして強さに衝撃を受けた。
「父と会って全てを話したわ。父は尋常なく泣いていた。
そして何度も何度も言っていたわ。」
「俺に息子がいるのか。息子がいるのか。」
あんたの経緯をしった父は、
「俺に似て不器用だから、あいつを守ってくれ。頼むから守ってくれ。悪から遠ざけてくれ。俺みたいにならないように。」
わずかな隙間から手を出し強く強く握って。
そしてもう一つ聞かせてくれと。
「俺の愛した女に、手を出した男。わが息子と悪に引きづりおろしたその男。名前だけでも」と
「私達の父。そしてあんたの母。ここで永遠の愛を誓ったのよ。」
「えっ」
「ここ?」
「あんたの尻の下。見てみな」
あわてて俺は腰をすべらせて、ケツのしたを見た。古びたベンチに何かの文字が薄く。
汚れたほこりやどろ、錆を手で必死でこすった。
次第に文字が浮き上がってくる。