掠れた声で囁いて
「……いいにくいけど、座ってた方が痴漢はされにくい。座っててもあるにはあるが、滅多にない」
「な、なるほど……」
「それに俺が目の前で話していれば、牽制にもなる……てことでどうだろう?毎日毎日、女の子を立たせて自分だけ座っているのは納得しかねるというか……」
ゴクリと唾を飲む。
つまりだ。この提案を受け入れれば、相模さんと毎日一緒にいられる。
「イエスかノーかで言えば?」
「いっいえすっ!」
相模さんのことが好きで好きで仕方がないのに、この提案を逃す手はない!
「じゃあ、交渉成立ってことで、明日からよろしく」
「はい!」
いいお返事、と相模さんの目尻が下がった。その笑顔に見惚れていると、さっきの名刺貸してと言われた。
言われるままに手帳の間に大事に挟んでおいた名刺を取り出してお返しする。
相模さんはそれを受け取るとサラサラと何かを書き込んだ。
「はい」
「……これって」
「俺のプライベートのメアド。学校行かない日とか、いつも通りの時間じゃない時は連絡して」
メアドに加えて携帯電話の番号も書き足される。
「名刺の方のは会社のメアドだから、見るの遅くなるから。必ずこれに送って」
「わ、分かりましたっ」
意図せず、メアドをゲットできたことに、天にも昇る心地で返事をする。