夢三夜
ここはどこだろうか。
彼女と別れて、あてもなく彷徨っていたら、いつの間にか来たことのない場所に来ていた。
ふいにおかしくなって、雑踏の中、立ち止まりクスクス笑う。
通行人が迷惑そうに優のそばを通り過ぎてゆく。
『本気で好きな人ができたの』
つまり、自分との付き合いは本気じゃなかったわけだ。
『ごめんなさい、別れてください』
悲劇のヒロインごっこかよ。
ふざけるな。
別れ際の悲愴な顔を思い出し、ますます笑いが止まらなくなる。
ああ、おかしい。
捨てておきながら、哀れむのか。
可哀想な優、って?
ふいに何かがこみ上げてきて、優は静かに感情を押し殺した。
一瞬ぼやけた視界はすぐに元に戻った。
大丈夫、俺は、泣いたり、しない。