夢三夜
夢
しく、しく、と悲しげな声がした。
見れば小さな男の子が泣いている。
どうしたの
尋ねても男の子は泣くばっかりで、答えようとはしない。
おうちはどこかな。
悲しげな泣き声は止まらない。
それでもやっと、男の子はしゃくりあげながら答えた。
お、お父さんがいなくなったのっもう、ずっと、あ、会えないの
……そっか
優はふいに、父が亡くなった時のことを思い出した。
母の涙にいろどられた、悲しい記憶。
「……俺も、大切な人がいなくなっちゃうんだ。」
男の子が顔を上げた。
「大切な人、みんないなくなるんだ。父さんも、母さんも、あいつも…っ…」
頬を熱いものが伝っても、とめる方法がわからなかった。
泣いてはいけない。
泣いてはいけないのに。
心の中に溜めていた悲しみが溢れて止まらなかった。
小さな手が、そっと頭を撫でてくれる。
赤くなった男の子の瞳は、不思議と母の瞳に似かよっていた。
それは優の瞳でもあった。
泣きつかれて気がつけば、優はアパートのベッドの上で横になっていた。
夢を見ていたらしかった。