私の命を、貴方に
1 捕らわれの少女



1875年、ロカイダ王国。

澄み切った空を鉄格子の窓から見上げながら、シエラは深い溜め息をついた。
今日はどんな卑しい男たちと相手をするのだろう。そう思うと心も身体も漆黒の闇に呑み込まれていく様な気分になる。
彼女は幼い頃からこの娼館に住んでいた。
シエラは母の美を受け継ぎ、大層美しかったので幼い頃から将来はこの娼館の看板娘になるよう教育を受けてきた。幼い頃は姉たちの着替えの手伝いなどの教育を受けていた。綺麗なドレスに身を包み、濃いめのメイクを施した姉たちが羨ましかった。それが去年、15の年の事であるが、「夜のお相手」についての教育が始まってからというもの、16になる自身の誕生日が迫ってくるのが、苦痛で仕方なくなってしまったのである。自身が16になる日、この娼館では初めて「夜のお相手」の仕事をするのである。そこからはどんなに足掻いても一生後ろ指を指されるのだ。しかも姉たちに聞くと、シエラはその日に買い取られるのだそうだ。
ー逃げ出したいーそう思っても、この囚人が入るような部屋からは、一生逃げられないのである。何よりこの足枷である。娼館の、特に有望な娘には逃げ出せないようにこうやって足枷をつけておくのが、ここのしきたりであった。

「ああ、神様。」シエラは祈った。
「ここから助けてください。」

ーーー16になる前にーーー
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