可憐な日々
「そうだろうな〜」

裁判官の顔が、お客の顔になる。

そして、次の言葉が、

違う意味で、

可憐を奈落に突き落とす。

「絶対…二十歳は、こえてるよな」

可憐のすべてが一瞬、止まる。



「はあ?」

可憐は素に戻り、キョトンとした顔を、お客に向けた。

お客は、ビールを一口飲むと…もう一度、可憐の顔を確認し、

大きく頷いた。

「絶対二十歳以上!18だなんて、大バレだよ」

可憐の肩が、ワナワナと震えた。

「嘘が下手くそだね。カレンちゃんは」

可憐は、再びテーブルから、グラスを引ったくると、

今度は、勢いよくグラスを差し出した。

「おかわり…頂けますか!」

「あ、ああ」

あまりの可憐の雰囲気に、お客も、歳の話題はしてはいけなかったのか…と、

少し反省したかの如く、

愛想笑いを浮かべながら、可憐のグラスに、ビールを注いだ。

「いただきます!」

可憐は一気に、飲み干した。

可憐…生涯初めてのやけ酒だった。

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