可憐な日々
第2章 いじわるなうそつき
ゲストのお客が帰った後、

今度は、別の席へ、ヘルプで回される。

ヘルプとは、指名のホステスが、指名が重なっている為、席を開けている間の、穴埋めである。

「失礼します」

席に座っているのは、30過ぎのサラリーマン風の男。

軽く会釈し、隣に座るが…。

まったく、しゃべらない。

少し仲良くなった先輩が、言っていたけど、

指名の女の子以外、まったくしゃべらないお客はいるらしい。

まるで、指名の子以外と話すことが、浮気でもしてるかのように…。

(俺は、お前以外の女とは話さない!)

その先輩は、ゲラゲラと笑いながら、

(彼氏とか、お前だけとか…特別感を、アピールするキショイやつは多い。気持ち悪い)

先輩は、吐くような手振りをする。


「あのお…」

何か話そうと、口を開くが、お客は前を見て、無表情で、可憐を見ようともしない。

ちょっと戸惑っていると、

「ありがとうございます」

後ろから、声がした。

はっとして、可憐が席を立つと、

茶髪の髪を上で束ねて…

一際目が大きく、猫のようにつり上がった女が、お客の隣に座った。

お客の顔が、ぱっと笑顔になった。

< 16 / 80 >

この作品をシェア

pagetop