可憐な日々
「カレンちゃんだっけ?」

他の席に戻ったサキは、

いつもより上機嫌なお客を、怪訝そうな顔で見つめた。

「あんな子、入ったんだ」

お客は、ぐいっとVSOPの水割りを飲み干すと、

隣に座ったばかりのサキに、グラスを差し出した。

「ああいうタイプの子。今まで、この店にいなかったから、新鮮だった」

サキはクスッと笑うと、おかわりをつくりながら、

「あんな子…店の品位が下がりますわ」

「そんなことはないよ」

サキは、グラスの表面をハンカチで拭うと、

「安田さんは…ああいう女の子が、好みなんですか…?」

微笑みながら、グラスを安田に手渡す。

「な、何言ってんだ。俺は、サキのような…成熟した女が」

お客は、グラスをテーブルに置くと、

過剰な程、サキの腕を触った。

サキはしばらくすると、

やんわりと、腕を離した。

お客は、手を止め、

「誘っても…全然、会ってくれないし…」

「時間がありましたら…」

「それ、ばっかじゃないか」

すねるお客に、今度は、

サキから少しだけ、すり寄り…そっとお客の手の上に、てを重ねる。

「お気持ちは、嬉しいです」

< 21 / 80 >

この作品をシェア

pagetop