可憐な日々
可憐は、店に並ぶ携帯たちと比べた。

(これだけは…)

携帯を握りしめ、可憐は震えながら、

「決めました」

ディスクの上に、可憐は携帯を置いた。

「解約はしないで、機種変更だけで…」




(仕方がない…)

可憐は、心の中で泣いていた。




「アドレスは移されますか?」

機種変更と決まって、少しほっとした店員は、

キーボードに指を走らせる。

「アドレスなんて…登録されてません…」

落ち込んだ可憐の呟きに、

「一件だけ登録されていますね」

「え?」

驚いて、顔を上げた可憐の方を、店員は見ずに、

「シークレットになってますけど…」

可憐は立ち上がり、

「今まで、電話なんて…かかってきたことはないんですよ」

「そうなんですか?」

店員は、携帯を調べだした。

しばらくして、

「登録以外…着信拒否になっていますね。それに…」

店員は、可憐に携帯を返した。

「つい最近、着信があったみたいですよ」

「え…」

可憐は、携帯を調べた。

可憐は気づかなかったが、

3日前に、着信履歴が残っていた。

名前は表示されていないけど、確かに、着信は残っていった。
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