可憐な日々
第1章 可憐
「…で、今、何歳なわけ?」

男は、履歴書を眺めながら、前に畏まって座る女の子を見ていた。

だっ広いホールの一角のソファで、面接をしていた。

「18になったばかりです」

にっこっと微笑む女の子を、しばらくじっと見つめてから、

もう一度、履歴書に目を落とした。

「名前は…伊藤里奈と」

年齢も、間違いなさそうだ。

目線を上げ、男は確認する。

「この仕事…。初めてだよね?」

「は、はい!」

男の質問に、女の子は、元気よく返事した。

男は頷き、

「いつから、働けますか?」

女の子は、さらに元気よく、

「今日からいけます!」

「え?いけるんですか?」

驚く男に、笑顔で、女の子は、思い切り頷いた。

「じゃあ…源氏名だけど…」

「源氏名?」

男の言葉が、わからない。

「ああ…店での呼び名だよ」

女の子は、少し首を捻り、

やがて、ポンと手を叩いた。

そして、にっと歯を見せると、


男に向かって言った。


「可憐で、お願いします」


「か、か、かれん!?」


男の声が、思わず、裏返る。


「はい!」


女の子は、元気よく頷いた。
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