可憐な日々
どんなに一流企業の社長だって、女を口説く時は、下衆になる。

体を寄せる女だって…。

エイリは嫌悪感を覚えながらも、これがこの世の摂理ならば、

(人は容易い)

エイリはちらっと、奥の社長室に続く通路のドアを見た。

(あいつは分かっている)

ホステスが、ビールのおかわりを告げていた。

エイリは走りながら、

(分かっていても、この程度なら)

ビールを冷蔵庫から出し、

(いっしょだ)

ボックス席に運ぶ。

エイリはまだ高校生だ。

年齢を偽り、店で働いていた。

社会に出る前に、世間の醜さ、男と女の醜さを見ておきたかった。

(くだらない)

今のところ、これがエイリの感想だった。


工藤英利。

高校二年生。

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