可憐な日々
「どうだ?」

電話を切った店長に、こじんまりとしたビルの一室で、佇む柳川が、きいた。

「脈は…あります」

店長の言葉に、柳川はにやりと笑った。

きちんとした事務所を構える華憐と違い……T.L.Cは、事務所と言えるものを持たなかった。

それの方が、何かあったときに便利であるし、事務所に金をかけるのが、勿体なかった。

「あの歳の女が、一番…心に焦りを持っている。どんなに強がってようが…な」

柳川は、フッと笑うと、6畳くらいしかない部屋に置かれたソファに、腰掛けた。

「引き抜ける女は、全部引き抜け!今は…数がいる」

「はい」

店長は、頷いた。

「時期が来れば、必要がなくなったホステスは…全員やめさしたらいい。あいつらに、社会的権限などないからな」

柳川は、煙草を取り出すと、口にした。

「この世界は、金だけだ。金が一番だ。ホステスも、店も…その下だ。やつらだって、わかってるはずだ。金がほしいから、ホステスをやってんだからな」

柳川は、ライターで煙草に火をつけると、

「俺達の価値は、金儲けだけだ……。それしかないのに…あいつは、人の繋がりを語りやがる」

柳川は、煙草を噛んだ。

「こんな世界で…人の繋がりだと!ない!こんなものは、ない!」

柳川の話に、店長はただ黙って立っている。

「この世界に繋がりなんてない!馴れ合いか…裏切りだけだ」

柳川は、灰皿に煙草をねじ込むと、

「そのことを教えてやろう」

にやりと、笑った。






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