可憐な日々
「あのさあ〜」

働く時間が終わり、更衣室に向かう可憐に、

若いウェイターが声をかけてきた。

若いといっても、19だ。

可憐にとっては、かなり年上のはずだけど…この世界にいる若い男は、チャラチャラしていて、単なるガキにしか見えなかった。

まだその辺にたむろしているホストよりは、髪のボリューム等押さえているが、

それが中途半端で、可憐には少し苛立った。

「何ですか?」

一応職場である。ウェイターには、きちんと対応はする。

理沙とかは、友達感覚で接してるけど。

「あのさあ〜」

同じ台詞を繰り返すウェイターに、イラときた。

「失礼します」

頭を下げ、更衣室に向かおうとする可憐に、慌ててウェイターは周り込み、

「こ、今度さあ〜コンパしない?」

「はあ〜?」

可憐の苛立ちは、ピークを迎える。

「勿論、店には内緒でさ!」

ウェイターは、無理矢理自分の名刺を渡すと、

またホールへ戻っていった。

思わず受け取った名刺の裏を見て、書いてあるメルアドを確認して、

可憐はため息とともに、破ろうとした。

「チョイ待ち!」

突然、更衣室のドアが開き、手が出てくると、名刺を奪い取った。

「美紀?」

着替えをすました美紀が、更衣室から出てきた。

「あの男は、いけてないが…あいつの開くコンパは、イケメンが揃うと有名なのよね」

美紀は、名刺を指で挟みながら、くるっと回転した。

「それなのに!」

可憐に、顔を近付ける美紀。

「芝居じみてる…」

思わず、顔を反らす可憐。

そんなことは、お構い無く、美紀は続ける。

「そのコンパに、誘われるやつあ〜。あの野郎!顔で、選んでやがる!」

「つまり!」

今度は、更衣室の中から、理沙が出て来た。

「あたし達は、呼ばれたことがない!」

二人は、可憐に詰め寄った。

「可憐!理想は三三よ!」

「友達もいきたあ〜いってえ!」

妙にしなをつくる理沙。

「心配するな!メールのやりとりは、あたしがしてやる!」

美紀は、可憐の肩に手を置いた。

「できればあ〜あんたがあ〜いないほうがい〜い!」


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