可憐な日々
一通り話して、T.L.Cの良さを説明してから、美紀は携帯を切った。



「これでいいのよね!もし、入ったら〜紹介料くれるのよね」

お客を相手に、はしゃいでいる理沙を尻目に、美紀はそばにいた店長にきいた。

「ええ…」

店長は頷いた。

「来ないかな〜可憐!」

天に祈る美紀に背を向けて、店長は歩きだした。

(フッ)

店長は心の中で、笑った。

「店長!」

ホールの奥から、ウェイターが店長を呼んだ。

店長は奥に向かうと、ホールの入り口の横に立つ女が、目に入った。

一瞬、店長の動きが止まる。

「今日から働くことになった……サキだ」

サキの後ろから、柳川が現れた。

サキは無表情な顔のまま…店長に頭を下げた。



「サキさん!ご指名です!」

ホールから、ウェイターがサキを呼びに来た。

サキは顔をあげると、また軽く店長と柳川に頭を下げ、ホールの光の中へ歩いて行った。


「……来たのですか…」

サキの後ろ姿に感嘆しながら、店長は言った。

「もう…お客を呼んでるとは…本気だな」

柳川は、笑った。

「これで…華憐から引き抜いたのは、十人を越えましたよ」

店長は腕を組み、お客の席につくまで、サキを見送ってしまった。


「今日は…営業できないな…華憐は」

柳川は、嬉しそうに笑った。




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