可憐な日々

無言になり…少し顔が青ざめている可憐に、

ｵｰﾅｰは微笑んだ。

久々に会った娘に、ｵｰﾅｰはどうしたらいいのか…わからない。

赤ん坊から見ていなかった…。

(こんなに大きくなって…)

気を抜いたら、泣きそうだ。それをぐっと我慢していた。



可憐は、そんなｵｰﾅｰの心などわかるはずがない。

ぎゅっと胸を握り締めると、可憐は唇を噛み締めてから、

｢あなたは…誰ですか？証明するものを持ってますか？｣

｢あっ！ああ…｣

ｵｰﾅｰは、体中を探した。焦りが、慌てさせた。いつの場所がわからない。

何とか裏ﾎﾟｹｯﾄから、名刺を取り出すと、可憐に差し出した。

松崎達也。

名刺に書かれた名前は見て、可憐は確信した。

役職は、代表になってるが…後は変わっていない。


可憐は、受け取った名刺を見つめながら、声を震わしながら、こたえた。


｢母は…死にました…｣

｢え…｣

思いも寄らない可憐の言葉に、松崎は言葉を失った。

｢あなたに捨てられて……母はお酒に溺れ……肝臓を悪くして、亡くなりました｣

｢馬鹿な…｣

松崎は、予想外の出来事に、絶句し…軽く目眩が襲ってきた。

可憐は顔を上げ、松崎を睨み、

｢今更…何しに来たんですか？母を捨てて…今まで、あたし達を無視して…今更…どうして…｣

可憐はこれ以上…声がでなくなった。怒りや悲しみや…いろんなものが、ぐちゃぐちゃになって…言葉が、心の中で詰まっていた。