可憐な日々
「だって…華憐は、捨てたもの…」

サキの言葉が、胸に突き刺さった。

「捨てた……?」

「そうじゃない…。あなたも、ここにいる。今日、華憐は営業できると思う?」

控え室のドアの前で、サキは振り返り、

「ホステスは、一度捨てた場所には戻れないのよ」

可憐を見つめ、

「戻る女もいるけど…もうそんな女には、ホステスの価値はないの」

「……」

可憐は、無言になる。

「ホステスは…世間的には、お金の亡者や、男を騙してると言われるわ。確かに、そうかもしれない…。だからこそ……ホステスには、一番必要なのよ」

サキは、ドアを開けた。

「プライドが」

サキはそう言うと、ホールへと飛び込んでいった。


可憐は、出ていく時の…サキの背中が、目に焼き付いていた。


華やかとだけイメージされる…この世界。

だからこそ、ホステスには、着飾ったドレスや、美貌は必要だろう。

だけど…そんか外見よりも、大事なものがあった。

プライドである。


あたし達は金で買える。あたし達の時間を、金で買える。


だからこそ、あたし達自身は、プライスレスでいなければいけないのだ。

あたしの心は買えない。

それが、プライドだ。

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