唯一の純愛
死別
旦那から逃げ出して程なく、一度だけ、旦那が妻を訪ねて来た事があったそうです。

恐らく、妻が逃げた後も、男達に弄ばれていたのでしょう。
酷く疲れた顔をしていたそうです。

旦那は多くを語らず、また来ると言う言葉と、空っぽの大きなボストンバッグを置いて行ったそうです。

それが、妻が最後に見た旦那の姿でした。

もしかしたら、旦那はこの時点で、自らの死を予感してたのかも知れません。

それから程なくして、旦那が事故死した事を知ります。

旦那の両親の話では、全身に暴行の跡があり、無残な最後だったそうです。

暴行の跡はあるものの、事故と結び付ける証拠が何も無かったため、この時は事故死として処理されたそうです。

自ら見限り、逃げ出した夫とは言え、妻の受けたショックは相当なものであったことでしょう。

実際、この出来事は、妻と息子に長く影を落とすことになります。
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