唯一の純愛
策に落ち度は無かったはずである。
サークルへの参加人数も、当初の予定通りに増加していた。

掲示板上での参加者とのやり取りも、マメにやっていた。
言葉のチョイスにも細心の注意を払っていた。
誰にも不快な思いはさせていないはず。

サークル運営者として、確かに手応えは感じていた。
しかしどうして、私の中の根拠のない自信は、粉々に砕かれた。

オフ会参加希望者、1名。

これは想定外だった。
参加者達への地道な根回しを重ね、5人は固いと踏んでいた。

その後の策も、5人以上を想定して練っていた。

しかし実際、蓋を開けてみれば、参加表明をしたのは1名だけ。

自分自身の認識が甘かったと言わざるを得ない。

人見知りを舐めていた。

私自身、初対面の人間を警戒こそするが、人見知りはあまりしない。
こと遊びとなれば、人見知りよりも、ワクワクが先に来るタイプであると自負している。

世の人見知りがこれほど深刻だったとは。

しかしこれは大変まずい。

一人でも参加者がいる以上、中止にするわけにはいかない。
ここで止めてしまえば、きっと後に響くだろう。
最初のオフ会で躓くわけにはいかない。

私の策では、この初回は後への布石だった。
参加者達からの口コミ効果に期待していたのだ。
一人では効果が薄い。

日程ギリギリまで、参加者を募り続けるも、増える事はなかった。
苦肉の策として、私が行ったのは、所謂ローラー作戦である。

年齢、性別、地域で検索をかけ、片っ端から足跡を残す。
どうと言う事はない、要するに手当たり次第である。

足跡が付いていれば、気になって相手を確認してしまうものだ。
自分のプロフィール画面に、サークルの事を目立つように書き込み、さらに足跡帳なるものを作成。

足跡帳とは、私のプロフィール画面を覗いた人、つまり足跡をつけた人が、簡単に挨拶を残すための簡易掲示板である。

足跡を付けた相手のページに足跡帳があれば、挨拶を書き込むのがマナー。
そんな暗黙のルールを利用したのだ。

今回、検索条件の中に、カラオケというワードを入れていた。
私が足跡を付けた人物は、プロフィール文の中に、カラオケという文字を含んでいる人物のみだ。

案の定、何人かからリアクションが帰ってきた。
しかし、サークルの事には誰も触れて来ない。
仕方ないので、リアクションのあった人物と、片っ端からコンタクトをとる。

最早、なり振り構っていられない。

< 22 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop