唯一の純愛
あの日から、私は彼女の家を頻繁に訪れる。
子供も私に懐き始め、なんとなく彼女が私に寄せる好意も察していた。

がしかし、私は彼女の気持ちから目を背けていた。

彼女の気持ちに応えるという事は、必然的に子供も巻き込む事になる。
自分達だけなら、付き合うも別れるも簡単である。

しかし、そこに子供が絡んでくると話はそう簡単ではない。

長く付き合えば、いずれは結婚も考えるだろう。
それはつまり、私は父親になる覚悟もしなけらばならない。

私には父親になる自信はなかった。

だから彼女の気持ちから目を背けていた。

彼女に対し、明確な恋心は芽生えていた。
されど、恋心だけで父親になれる程、私も若くはなかった。

彼女に想いを伝える事もできず、かと言って距離を置く事もできず、好意と不安の板挟みだった。
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