唯一の純愛
妻はいつも何かに遠慮していました。
それは私に対しても同じです。

これまでの経験が、そうさせていたのでしょう。

私は妻のそんなところが嫌でした。

自分にだけは遠慮なんてしないでほしい。
常々そう思っていました。

しかし、それは環境がそうさせてしまったのであって、妻自身には何の落ち度もありません。

妻が置かれてきた環境を呪ったところで、何の解決にもなりません。

私にはただ、ゆっくりと時間をかけて、妻の心を解きほぐしていく事しかできません。

妻のそんな部分は、時として交遊関係に影響を及ぼす事もありました。

必要以上の遠慮は、相手によっては不快感を与えてしまいます。

妻をきちんと理解してる人ならば、流すなり一喝するなり、うまく凌いでくれます。

しかし、付き合いの浅い相手だと、逆に嫌味に捉えられる事も屡々でした。

そうして傷ついていく妻を見る度、堪らなくいたたまれなくなりました。

妻が悪いわけでは決してない。
なのに罵倒され、傷ついていく妻の涙。
慰めてやる事しか出来ない自分。

全てが歯痒く、もどかしく感じました。
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