唯一の純愛
遠慮と同じくらいに、妻は他人を助けたがる。
いや、人に限った話ではない。

我が家には5匹の猫がいる。
その全てが、里親として引き取ったものだ。

飼えない理由があって困っている飼い主、行く当てのない猫。
その両方を助けたくて、引き取ってしまう。

決して幸せな人生だったとは言えないが、だからこそ、自分が色んな人の助けの上に成り立っている事を、誰よりも実感していた。

自分が助けられてきたように、自分も誰かを助けたい。

そんな思いの表れだと思います。

困っている人をほっとけない。
今時珍しいくらいのお人よしでした。

そんな妻を利用する人間もいました。

妻の純粋な思いを踏みにじる人間が許せず、相手の職場まで怒鳴り込んだ事もありました。

説教をした事もあります。

それでも妻は、困っている人をほっとけませんでした。

確かにそれで傷付く事もあります。
しかし、人を助けたいと思うその気持ちそのものは、尊い事です。

いつしか私も覚悟を決め、ならば自分も一緒に傷付こうと考えるようになりました。

もちろん無条件ではありません。
人を信じる事のリスクを説いた上で、それでも尚、助けたいと願い、その理由に私も納得できた場合に限り、私は全力で妻を応援しました。

こうやって助けた事が、いつか妻のかけがえのない財産になるでしょうから。

何より、そんな優しい人だからこそ、私は彼女を好きになったのだから。
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