唯一の純愛
私が初めて息子に会ったのは、彼が8歳の頃でした。
第一印象は、少し人見知りはあるが、挨拶もちゃんとできる素直そうな子、というものでした。

ある時、私は彼に違和感を覚えました。
それは、彼と妻がゲームで遊んでいる時でした。

彼は負けそうになると、手足をバタつかせて暴れ出しました。
拳を固く握りしめ、涙を溜めた目で妻を睨みつけ、今にも殴りかかりそうな雰囲気でした。

なんだこれ?

負けたくない気持ちは解りますが、小二にもなった子供がここまでムキになるものなのか。
いや、ムキになるなんてレベルではありません。
明確な敵意すら感じてしまう。
それほど異様な光景でした。

呆気にとられていると、妻がわざと負けた事で、何事もなかったように笑顔に戻りました。

なんだこれ?
何かおかしい。

そう思いましたが、あまりにも何事もなかったようにゲームが続けられていたため、その場は何も言わず流しました。
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