らぶ♂ちょい

腕時計に目を落とすと、時刻は既に、退勤時間の5分前。


定時通りに帰ることを日課にしている私が……残業。


……ついてないな、今日は。


諦めかけて席を立つと


「いたいた、痴女のコトリちゃん、発見」

「――ち、痴女だなんて、ヒドすぎます!」


『コトリ』呼ばわりの上、『痴女』という冠まで付けて、ノートパソコンを抱えた西野さんが、ミーティングルームへと入って来た。


確かに、男子トイレに入ったけれど。

それは、避けられない事態だったというか。


「西野さんが悪いんですよ?」


私の反撃に、西野さんはおどけたような笑顔を浮かべた。

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