うそつき執事の優しいキス
 やっぱり、電気の接触か何かが、悪いらしい。


 ついたり消えたりする、蛍光灯に照らされた宗樹の整った横顔には、今はもう、何の表情も浮かんでなかったけれど。


 朝からあった、顔の傷が目立って見える。


 どうしてこの傷はついてしまったのだろう?


 ご先祖様からの約束に、がんじがらめに縛られている宗樹が、自分の意志で何かと戦って出来た傷だったらいいな。


 けれども、もし、辛い事があってその先に、この傷がついちゃったのなら……どうしよう!


「なんだよ?」


 わたし、宗樹の顔をじっと見過ぎてたみたい。


 けげんな顔で眉を寄せる宗樹に「ううん」と首を振りかけ、声をかけた。


「そう言えば、顔の傷ってどうしてできたんだっけ?」


「……それ、聞く?」


「だって、宗樹は自分から誰かを殴りに行くタイプじゃないんでしょう?
 むしろ、蔵人さんが体育館に乱入して来た時は、止めてたし!」


 朝、駅で別れたときだって、全部話が出来なかったけど、別に宗樹がちゃんとしてなくて出来た傷だとは……悪いことをして傷を作ったんだなんて思って無かったよ、って。


 やっと伝えられた言葉に、宗樹は「そか」と、息を吐き、空を見あげた。


「……結果だけを言えば、裕也と蔵人に殴られたんだが」
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