うそつき執事の優しいキス
「ねぇ、西園寺さん!
 お昼は、一緒に第三音楽室準備室で食べない?」


 朝のあり得ない部活勧誘騒ぎを乗り越え、午前中の授業がなんとか終わったお昼休み。


 そう、井上さんに言われて、わたしは首を傾げた。


「……なんで?」


「だって、ホラ!
 普通に教室とか、校庭の隅じゃ無理でしょ、やっぱ!」


 そう、言われて、周りを見渡せば……確かに!


 廊下に一杯ヒトが集まり、扉からなだれ込まん勢いでこっち見てる。


 うう。


 このヒトたち、わたしに部活を勧誘したい先輩がた、ってコトだよね?


 朝、生徒会長な神無崎さんに『無理な勧誘をするな』って釘を刺されたから、今まで、直接教室には入って来なかったけれど……!


 このままぼーっとしてたら、クラスの皆に迷惑だろうなぁ、って思う。


「……うん。でも、なんで第三音楽室、じゃなく準備室……?」


 ウチの音楽室は、三つある。


 ……とはいえ、授業に使っている音楽室は、新校舎にある第一、と第二音楽室だけだけど、ね。


 第三音楽室は旧校舎にあるんだ。


 旧校舎は昔、通っている生徒が多かった時には普通に使っていた校舎だけど、今は、直接授業では入らない。


 主に、教室を使う文科系クラブの活動部屋と、スポーツ系も含めた部室が詰まっている場所で……


 第三音楽室を使っているクラブは……軽音!?
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