うそつき執事の優しいキス
「うん、今、第三準備室はCards soldier専用控室になってるんだけど……」

「行かない!」


 反射的に応えたわたしに、井上さんは、まぁまぁ、と手を振った。


「話は、最後まで聞こうよ。
 Cards soldierのダイヤモンド・キングとクローバー・ジャックが生徒会役員でしょう?
 準備室には、スペード・エースが残した作曲用のPCがあってさ。
 それが、学校の備品より高性能だっていうんで、第二生徒会室みたいになってるの。
 西園寺さんって『生徒会預かり』ってことになってるでしょう?
 軽音部関係無くても、準備室使えるんだよ~~」


「でも、宗樹……じゃなかった。
 クローバー・ジャックな藤原宗樹先輩に、軽音部には来るなって言われてるし」


 朝からざわざわし始めた心臓が、苦しくて、宗樹の顔をまともに見られる自信が、ない……


 ……だから、やめとくって言ったのに!


 井上さんは「そこは軽音部室じゃないから、大丈夫!」とわたしの手を引っ張った。


「いや、全然大丈夫じゃなく!」


 藤原先輩が、学校に来てまでわたしに会いたくないから、言ったんじゃないかな!?


 そんな叫びは井上さん、全く聞いちゃくれなかった。


「教室でご飯食べ辛いようなら、来いってダイヤモンド・キングが言ったの!
 彼に逆らえる生徒、この君去津にいる……!?」
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