うそつき執事の優しいキス
「真麻(まあさ)! ここでお嬢さ……ヒトを投げるな!!
 危ないじゃないか!」


 宗樹の地の底から這い出るような、不機嫌マックスの低い声を出した。


 確かにここは『旧校舎の準備室』って言うには、広いし、何よりも、Cards soldierのモノらしきギターの類いや、その他の楽器。


 そして、チューニング用らしい、アップライトのピアノが壁際に置いてあって、雑然としてる。


 確かに、あのとんがってドラムセットに放り込まれたら、大けがをするかもしれない。


 だけども、井上さんは、きゃらっと笑う。


「大丈夫、クローバー・ジャックが絶対受け止めてくれると思ったもの~~
 なんせ、二人はラブラブゥ~~?
 ジャックも大好きな西園寺さんを抱きしめる理由が出来ていいかなぁ、って!」


「ふざけんな! 俺は西園寺なんて嫌いだ!
 ただ、役目を果たしているだけなんだからな!」


 ……え?


 井上さんの言葉に、反射的に出て来た言葉、みたいだったけれど!


 こういう、とっさの時の言葉って……本音、ってこと多いよね?


 宗樹の言葉を聞いて、わたし胸が押しつぶされるかと思った。
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