うそつき執事の優しいキス
「外にいる先輩達って、別にわたしをいじめるために集まっているわけじゃないもん。
 わたしがどれか、一つか二つの部活に所属して、無理な所は謝れば……ちゃんと収まるよ、ね?
 だから、わたし、逃げないで話し合ってみるから……」


 わたしの言葉に、今まで自分の手をじっと眺めてた宗樹が、ゆっくり顔をあげ……ため息をついた。


「悪りぃ、変なコトを言って。
 今言ったコトは、ウソだ。
 一つか、二つの部活に所属、って。
 それだけじゃ、残った所から不満が出てくるんじゃねぇか?
 西園寺を追いかけてる部活のリストを作ろう。
 それを元に、俺が良い具合に時間調整してやる」
 

 うん。


 本当はそれが一番良い形だって、わたしも判ってた。


 でも、宗樹にこれ以上迷惑をかけることなんて、出来なくて……!


 わたし、さっきよりは大分マシに笑って、手を振った。


「いいって、自分でやってみる。
 だって、わたし。
 特別扱いがイヤで、この高校に来たんだもん!」


「おい、待て……!」


 宗樹が伸ばした手を振り切るようにして、わたしは廊下に飛び出した。


 ……けれども。


 結局、宗樹と井上さんを振り切って、勇ましく進めたのは、旧校舎を出た所までだったんだ。
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