うそつき執事の優しいキス
 一瞬、ぎょっとするくらい背の高い美丈夫で。


 Cards soldierのダイヤモンド・キングの名前を欲しいままにしている生徒会長に、この君去津高で逆らえる人は誰もいない。


 彼が怒鳴ると、わたしを取り囲んだヒトビトは、あっという間にいなくなったちゃった……!


 そそくさと去っていく先輩たちに『ふん』と鼻で息を吐き、神無崎さんは『それで?』とわたしを見た。


「こんなこともあろうかと、井上真麻に第三音楽準備室に連れてけ、って頼んだんだけどさぁ。
 ……伝わんなかったか?」


「う……ううんっ! 行った! 行きましたっ!
 井上さんと、二人で!
 だけど……その……」


「……先に宗樹がいて、なんか言ったんじゃねーの?」


「……」


 図星をつかれて黙ると、神無崎さんはしょーがーねーなー、と頭を掻いた。


「西園寺、お前、昼飯は食ったか?」


「……もはや、それどころではなく」


「まあ、そうだろうな」


 一応、手にはお弁当持っているって見せたら、神無崎さんは、わたしの腕をぐい、と引いて言った。


「今日はオレサマに付き合え!
 色々話してぇこともあるしな。
 めんどーなヤツが誰も来ねぇ、ステキな場所を知ってるんだ」


 えっええ~~と。


 昨日、宗樹からは危ないから神無崎さんには近づくな、とは言われてたんだけども……
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