うそつき執事の優しいキス
 神無崎さんは、何を言ってるんだろう?


 わたしにそんなこと言われても困る。


「もともと、宗樹は宗樹自身のもので、わたしのモノなんかじゃないですけど……?」


 ……って言うしかなかったのに!


 神無崎さんの瞳に危険な色が混ざる。


「とぼけんな。
 オレだって一応事情は知ってるんだぞ?
 西園寺と、宗樹ん家の関係ぐらい……!
 このままぼーっとしてたら、宗樹の未来は西園寺の執事、決定なんだろ?
 宗樹をお前の下で一生、ピアノ弾かせたり、茶ぁ出さして終わらせるつもりなら、オレが使った方がよっぽどいいぜ。
 ……オレは宗樹の本当の価値と、使い方を知ってる」


「……神無崎さん」


「宗樹とは、物心ついた時から一緒にいた。
 中学までは、二人で私立の坊ちゃん学校に入ってたんだけど、ソコでウチの正妻サマの嫌がらせにあってな。
 外部に……ここに受験しなくちゃいかなくなった時もアイツはついて来てくれたんだ。
 宗樹と今まで二人でいろんなことをやらかしたが、すげー具合が良い。
 だから、これから先も、アイツとなら、何もかも、出来るような気がするんだ。
 今一番やってみてぇ、音楽の世界で天下取ることも。
 神無崎家乗っ取るのも……それ以上のコトも」
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