うそつき執事の優しいキス
「……」


「……本当に宗樹が自由なら、オレサマの出る幕はねぇけど、実際は違うんじやねぇか?
 宗樹も、色々才能あんのに、飼い殺し。
 嫌ってる西園寺に無理やり永久就職、って言うのは幼なじみとしても見てられねぇんだが……」


「……嫌ってますか、西園寺」


「まあな。つい最近まで、藤原家逃亡計画を練ってたぐらいには」


 やっぱり。


 胸の傷がぐぃーーって広がるように痛んだ。


 それでも宗樹を物みたいに簡単に『あげる』なんてことは、無理で。


 古くから続くシキタリがのしかかるから、宗樹自身も西園寺を抜け出せない。


 そんなわたしをじっと見て、神無崎さんは言った。


「……それで、お前に一つ提案があるんだ」


「なっ……何でしょう?」


「お前、オレとつきあわねぇ? ……真剣に」


「えっ!」


 本当に、いきなり何を言ってるんだろう!?


 いや、昨日出会った時から『付き合え』とは言われてるような気がするけれど、今回もまた突然だ。


 からかってるのかな? と隣を上目遣いで眺めれば、真面目な顔をしている神無崎さんの視線とあった。


「本人がどーあがこうと西園寺の下に、藤原がつくのは、古っりぃシキタリなんだろう?
 もし、お前の後に宗樹がついて来るなら、オレがお前たち二人まとめて嫁に貰ってやるぜ?」


「へっ!?」


 驚くわたしに、神無崎さんは笑う。
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