うそつき執事の優しいキス
「オレの方としても可愛い嫁と、有能な執事を両方手に入れられて、ラッキーなんだけど」


 えええええっ!


「神無崎さん、それ、本気……なの?」


「大本気」


 わたしの手を神無崎さんは、そっと取る。


「お前昨日、オレのコトを全く知らないで助けようとしたろ?
 神無崎の御曹司でもねぇ。
 Cards soldierのダイヤモンド・キングでもねぇ。
 喧嘩して、イケメンとはかけ離れたひでー顔の『素』のオレを。
 それが、なんかすげー嬉しくてな。
 昨日は一晩眠れないほどだったんだ」


「……でもわたし、そんな大したことをしたわけじゃ……」


「オレにとっては、すげーことだ。
 顔と名前で、近寄って来る女は掃いて捨てるほど居るけれど。
 肩書が全部が無いのに、振り返ってくれるヤツなんて……!」


 そんなの、ガキの頃から一緒だった宗樹ぐらいなもんだったのに、なんて神無崎さんは、くしゃっと笑った。


「それでも最初は、お前が宗樹の彼女だと思って諦めようとしたんだ。
 あの野郎、会った時からあんまりガキらしくなくてさぁ。
 いっつも冷静沈着で、怒ったり、泣いたり、どころか、ちゃんと笑ってる顔もあんまり見たコトがねぇのに。
 お前と出会った途端、フツーの高校生、やってんだもんな。
 ……でもな」


 言って神無崎さんは、目を伏せた。
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