うそつき執事の優しいキス
お嬢さまの気持ちと、うそつき執事の想い
「よ、西園寺。今日は一緒に帰ろうぜ」


 案の定って言うのか、それとも予想外って言った方が良いのか判らない。


 部活勧誘の皆さまが多すぎて、却ってどこにも所属できず……それどころか何もできず。


 学校の授業が終わって、集まり出したヒトを見て、さっさと家に帰る気になった。


 そして、裏口から海の見える道を越え、桜並木に差し掛かった所で声をかけられたんだ。


「神無崎さん……宗樹」


 振り返ると、わたしを呼んだ神無崎さんは、にかっ、と太陽みたいに笑って手を振ってる。


 そして宗樹は彼から三歩ほど下がって歩いていたけれど、わたしと目が合うと、ふぃ、と横を向いてしまった。


 その顔が、氷で作られた人形みたいだ。


 なんでよ!


 朝は確かに、赤くなったり焦ったりしてたのに!


 半日で表情が、ごっそり抜け落ちちゃったみたいに見える。


 でも、神無崎さんが全然気にしていない様子を見ると……


 これがいつもの宗樹……なの?


 ズキン……って。


 痛んで来る胸を抱えてわたしは、聞いた。


「えっ……っと、今日は部活休みなんですか?」


 本当は別なコトを宗樹に聞きたかったんだけど。


 目の前にいる神無崎さんと話をしなくちゃいけない雰囲気に、どうでもいい事を聞いてみる。
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