うそつき執事の優しいキス
 そんなわたし達に気がつかず、神無崎さんは、頭を掻いた。


「うぁ……さすが西園寺、厳しいぜ。
 宗樹でもやっぱり、半人前のウソ執事だってことか?」


 そんなことを言ってるんじゃないわよ。


 けれども『そんなコト』を口には出せずに、わたしはうつむいた。


 宗樹はわたしの『何』なんだろう……なんて。


 心のもやもやを言っちゃいけないような気がしたんだ。


 それが……その立場が決まってしまうのが、怖かったから。


 ……


 そんな感じで、今日は神無崎さんを真ん中に置いて、なんやかやと話しながら三人で特に問題も無く帰り……最寄駅には、宗樹の呼んだウチの車が待ってた。


 せっかくの部活休みだから買い物して帰るっていう二人と別れて、一人。


 考えることは、宗樹のコト。


 くるくると表情を変えて笑っている宗樹の顔ばかりが浮かんでくる。


 最後に見た人形みたいなキレイすぎる顔が、殴られた傷を見るより痛そうだった。


 わたしと、宗樹の関係なんて、知らない。


 けれども、あんな澄ました……表情の無い顔なんて、もう見たくなかったんだ。


 ………………………………


 …………………
< 157 / 272 >

この作品をシェア

pagetop