うそつき執事の優しいキス
「裕也が、お嬢さんにふさわしい相手かどうかなんて、当~~然まだ判らねぇけれど。
 裕也がお嬢さんを欲しい、って言葉に、ここまで心を乱しちゃいけねぇんだよ。
 ……それなのに」


 と宗樹は、また、大きなため息をついた。


「だから、昨日の帰りから執事の仮面を被っていようと思ったのに。
 お嬢さんの『執事じゃない』発言でまた、心が揺れる。
 裕也にお嬢さんを取られたくなくて、心が急(せ)いて、今日は駅に早く来ちまったくらいだ」


「そ、それって宗樹。
 あなた、もしかして……」


 長い話に、宗樹の想いが込められていて、わたしは思わず上目遣いで聞いていた。


「わたしのこと……すき?」


「好き」


 どんな形であれ、一生付き合っても、良いくらいには。


 そうつけたして、宗樹は、長い睫毛の目を伏せた。


 その様子を見て、わたし、そっか、良かったってため息をついた。


「昨日、宗樹も西園寺のこと、嫌いだって言ってたし。
 神無崎さんからも、宗樹が藤原家から逃げ出したがってるって聞いてたから。
 本当は、わたしのコト大嫌いなのに『お役目』だから、無理やり居るんじゃないかって思って……ちょっと……かなり。
 胸が痛むほど、悲しかったんだ」


 ……だけど『好き』かぁ。
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