うそつき執事の優しいキス
 

 ……なんか。

 本人いわく『一日分の気力と体力を使い果たした気分』なんだって!





 今、わたしは宗樹と朝の君去津駅にいた。


 宗樹の事情をちゃんと聞き、西園寺はともかく、わたしと一緒にいるコトが嫌いじゃないって判ってほっとして。


 じゃあ、今日は学校まで一緒に行こうよって誘ったのに。


『一日分の~~』って、言われちゃったんだ。


 まだ、一般の登校時間より早くて、誰も……部活勧誘の先輩たちも、まだ来てないだろうし。


 二人で登校しても騒ぎにならないけれど、そのかわり、たぶん一人でも無事に教室へたどり着けるんじゃねぇ? なんて。


 宗樹は一人でうんうんと、うなづいたかと思うと。


「じゃ、お先にどうぞ、行ってらっしゃいませ~~」


 なんて、とぼけた表情(かお)で手を振った。


 要は、わたし邪魔!?


 さっきは『好き』って言ってくれたのに~~


 ぷう、と膨れかけのほっぺたを抱えたまま、ふと見た宗樹の横顔が何か、真剣だった。


 ……神無崎さんと話でもするのかな?


 きっと、邪魔しちゃいけないんだよね?


 宗樹の様子に仕方ないなぁ、今日もまた、一人でガッコ行こって、桜並木の通学路を歩いてたその時だった。


 時々葉っぱの見えだした桜の花のその先に、今日も歌が聞こえて来たんだ。
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