うそつき執事の優しいキス
 神無崎さんの、ぎょっとするほど高い背を見上げて言えば、彼は考え込むように腕を組んだ。


「……蔵人?
 確かに、メンバー増員反対って騒いでいる本人を入れるのが、一番手っとり早いのは、確かだろうな」


「じゃあ、何も問題ないじゃないですか!」


「そうとも言えねぇ。
 蔵人をCards soldierに入れるには、最大の問題があるんだぜ?」


「音程がアヤシイって言うことなら、やり方を考えれば、歌えますよ!
 今の歌を聞いてたんでしょう?」


 もちろん、今までのCards soldierの歌をそのまま歌えるかどうかって聞かれれば、無理だし。


 ん、で、どっかの有名バンドのコピーが出来るか、って言うと果てしなく謎、なんだけども。


 これから、オリジナルの新曲を作ってゆこうと思うなら、多分問題ないはずだ。


「……もしかして、音楽の方向性が違う、とか……?」


 蔵人さんの歌が、Cards soldierの演奏したい曲と違うのかな……?


 そう、恐る恐る聞いたら、神無崎さんは『違う』と言って、胸を張った。


「蔵人の歌は、悪くねぇ。
 正直、アイツがこんなに歌えるとはちっとも思って無かったし。
 あれで、ちゃんとした歌詞がつきゃCards soldierの曲として演奏しても良いとオレサマは思う」


「じゃあ、なんで?」
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