うそつき執事の優しいキス
 宗樹は、当たり前のように仲裁係を買って出ると、二人の間にすたすたと入り、手際良く遠ざける。


 そんな、宗樹の話を一応は聞いたらしい神無崎さんは、ふん、と息を吐いた。


「別になんか書いても土下座しても、周りからじゃわからねえだろーが。
 そうじゃねぇ。
 蔵人がCards soldierの活動するならオレサマが名前を決めるだけだ。
 西園寺みたいに」


「ほーー。
 僕の名前を決める、って?
 スペード・エースにこだわって。
 後から入って来た、から。
『スペード・ツー』とか弱そうな名前をくれる、とか?」


 眉を寄せる、蔵人さんに神無崎さんはげらげらと笑った。


「そんなケチなマネはしねーよ。
 前代未聞の『超音痴』とはいえ、ウチのCards soldierのヴォーカルサマなんだから、絵札の名前をくれてやる!
 でも、全員に配った名前のカードのウチ。
 誰にも重ならねぇ絵札のカードは『ハート・クィーン』だけだけどなぁ!」


「ハート・クィーン!?
 すっかり女のコの名前じゃないの!
 誰とも被らない絵札なら、ライアンハート先輩にはジョーカーとかの方がいいのに!」


 ねぇ、西園寺さん? って、今まで黙って聞いていた井上さんに言われて、わたしもうん、と頷いたんだけど。


 神無崎さんは取り合わなかった。
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