うそつき執事の優しいキス
 チームワークとかそういった類のモノ、全く無い、とか言わないわよね?


 とりあえず、殴り合いにだけはなりそうにないものの。


 まだ、ぎゃあぎゃあ騒いでて、一向に静かにならない神無崎さんと、蔵人さんに盛大なため息をつき、宗樹は、さて、とわたしの方を向いた。


 ……って! うひゃひゃひゃ~~


 朝、こっち来る前にお互い『好き』って言い合った挙句。


 さっきの蔵人さんの歌で、宗樹のカッコイイ場面、一杯思いだした後で、なにかすっごく、照れるんですがっ!


 なんとなく、宗樹を真正面から見れない感じでうつむいたら、宗樹が低い声でささやいた。


「お嬢さんの本命って、実は、蔵人?」


 へ? ええええっ!?


 なんてこと言ってるのよ、このヒトは!


 びっくりして、宗樹の顔を見上げれば、切なげに目を伏せた彼の視線と一瞬会った……と思ったけれど。


 慌てて宗樹を見つめなおせば、別に特に変わったことのない。


 淡々とした雰囲気で、わたしから微妙に視線を外して、神無崎さんと蔵人さんの喧嘩……っていうか、獣二匹の強烈なじゃれあいを眺めてる。


 べっ、別に蔵人さんのことは、嫌いじゃないけど!


 そんないきなり『本命?』って聞かれて返事が出来る相手じゃない。


 それよりも、そんなことを聞く宗樹が変だ。
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